中国・ベトナムにおける外国企業の駐在員事務所・国内支店について【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.103
2024-12-16【中越ビジネスマニュアル 第 103 回】
中国・ベトナムにおける外国企業の駐在員事務所について
中国・ベトナムにおける外国企業の駐在員事務所について解説します。
1.中国
(1)根拠規則と内容
中国において、外国企業の駐在員事務所は常駐代表処と呼称されます。
開設の根拠となるのは、「外国企業常駐代表機構登記管理条例(国務院令2010年第584号)」であり、以下のような内容が規定されています。
1)代表登記
常駐代表処に派遣される外国人は、常駐代表登記を前提に、就業許可を取得します。常駐代表登記が認められるのは4名以内です(首席代表1名、一般代表3名以内)。
2)現地採用社員
現地採用社員は直接雇用不可であり、人材会社からの派遣を受ける形となります。
3)認められる活動
収益獲得活動は認められず、以下の内容(補助的活動)に限定して認められます。
(一)外国企業の製品またはサービスに関するマーケット調査、展示、宣伝活動
(二)外国企業の製品販売、サービス提供、国内買付、国内投資に関する連絡活動
4)オフィス場所
「代表機構の駐在場所は外国企業が自らで選択できる」と規定されています。
当条例施行(2011年3月1日)前は、常駐代表処の登記場所は厳格に管理されており、例えば、上海では登記可能な住所(商業ビルなど)が約800カ所リストアップされており、それ以外の登記はできませんでした。そのような管理が当該条例により自由化されています。ただし、住居用ビルは登記不可等、一定の制限は現存しています。
(2)課税
常駐代表処は、補助的活動しか認められておらず、収益は発生しないのが原則ですが、過去の経緯もあり、現在ではほとんどの常駐代表処が経費課税方式(経費をベースに企業所得税・増値税課税を受ける方式)で、課税を受けています。常駐代表処の規模によっても異なりますが、おおむね経費の10%程度の課税額となります。根拠法は「外国企業常駐代表機構徴税管理暫定弁法(国税発[2010]18号)」・「経費支出に基づいて収入を査定する非居住者企業の納税所得計算公式の修正に関する公告(国家税務総局公告2016年第28号)」となります。
2.ベトナム
(1)根拠規則と内容
ベトナムにおいて、外国企業の駐在員事務所はRepresentative Officeの略語として、レップ・オフィスとも呼称されます。
開設の根拠となるのは「商法(第36/2005/QH11号)」・「外国企業の駐在員事務所等設立に係る政令(第07/2016/ND-CP号)」であり、以下のような内容が規定されています。
1)代表登記
代表登記が求められるのは首席代表1名です。代表登記を前提に、就業許可を取得します。
2)現地採用社員
21年2月15日以降、現地採用社員の直接雇用は認められています(政令・第152/2020/ND-CP号)。
3)認められる活動
収益獲得活動は認められず、以下の内容(補助的活動)に限定して認められます。
(一)連絡活動
(二)市場調査
(三)外国企業の事業促進
4)オフィス場所
「駐在員事務所は、ベトナム法に準拠した安全、労働衛生等の条件を満たした場所に設置すること」と規定されています。住居用ビルは登記に制限がかかる等、一定の条件は存在しますが、外国企業が自ら住所選択をすることが可能です。ただし、オフィス物件を賃貸できるのは、不動産業の事業登記をしている事業者に限られますので、既に外国企業の駐在員事務所や外資企業が入居しているオフィスビルであれば、その物件は賃借可能であることが推察されます。
(2)課税
駐在員事務所は、補助的活動しか認められておらず、収益は発生しないのが原則ですので、中国のように経費課税方式で法人税・付加価値税を課税されるということは一般的ではありません。しかし、駐在員事務所が支払った諸経費に対して、駐在員事務所宛ての電子インボイスを受領していないケースにおいて、税務局はそれらの支払い額を駐在員の個人所得とみなし、個人所得税を課税する傾向にあります。
中国・ベトナムにおける外資企業の国内支店について
中国・ベトナムに設立した外資企業の国内支店について解説します。
1.中国
中国では、支店は分公司と呼称されます。
(1)分枝機構の特徴
1)経営性・非経営性分公司
分公司は営業活動を行う経営性分公司と、連絡活動のみを行う非経営性分公司に分かれます。経営性分公司は収益獲得活動を行いますので、分公司として独立した会計記帳、税務申告が必要です。一方、非経営性分公司は収益は発生しないため、分公司としての独立した会計処理は要求されません(総公司の一組織として、経費が計上される)。
2)弁事処
分公司とは異なりますが、弁事処と呼ばれる連絡事務所形態があります。外資企業の場合、過去には弁事処の開設も行政機関での登記が必要でしたが、2006年の会社法改定より、不要となりました。ただ、登記がない組織であるため、人材の雇用・銀行口座の開設等、一切の契約行為が不可であり(総公司名義で手続きをする)、従業員の社会保険を当該地で積み立てることができません。よって、正規の組織というよりは暫定組織として位置付けられるケースが多いです。
(2)分公司登記
外資企業の分公司の開設は、現在ではそれほど難しいものではありません。市場監督局で一定の手続きをすれば、開設は可能です。
ただ、非経営性分公司は、開設地では個人所得税・社会保険は納付しますが、企業所得税・増値税は納税をしない(当該地での税収貢献が低い)ことから、所管税務機関での確認取得が必要となります。
(3)経営性分公司の活動範囲
経営性分公司は、増値税発票の発行が可能であり、これは中国においては、収益獲得活動が認められることとほぼ同義です。よって、国内での売買、役務提供が可能です。また、19年に(過去には認められていなかった)税関登記も可能となりましたので、輸出入活動に従事することも可能となりました。
2.ベトナム
(1)分枝機構の特徴
1)独立支店・従属支店
支店は、本店から独立した会計単位として財務諸表を作成する独立支店と、独立した会計単位ではない従属支店に分かれます。独立支店は会計単位として独立していますので、独立した会計記帳、税務申告が必要です。一方、従属支店は法人税の納税単位とはならないため、支店単位の会計処理は要求されませんが(本店の一組織として、経費が計上されるのみ)、管轄税務局が異なる場合、事業税、個人所得税、付加価値税の申告が求められます。
2)代表事務所(連絡事務所)
支店とは異なりますが、代表事務所と呼ばれる連絡事務所形態があります。代表事務所の開設も行政機関での登記が必要です。登記制度上の組織ですので、人材の雇用・銀行口座の開設等の契約行為、従業員の社会保険を当該地で積み立てることは可能です。
(2)支店登記
外資企業の支店の開設は、それほど難しいものではありません(追加投資案件は除く)。計画投資局などで一定の手続きをすれば、開設は可能です。
発行される支店活動登記証明書において、独立支店と従属支店との区分はありません。両者の区分は、税務登記上の区分となります。
(3)支店の活動範囲
支店は、独立支店、従属支店の区別なく付加価値税インボイスの発行が可能であり、これは、ベトナムにおいては収益獲得活動が認められることとほぼ同義です。よって、国内での売買、役務提供が可能です。輸出入活動も本店の事業内容として登記されていれば、支店での従事が可能です。
以上