中国・ベトナムにおける非貿易項目の対外送金に関する源泉徴収・外資企業の減資について【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.109
2025-06-18【中越ビジネスマニュアル 第 109 回】
中国・ベトナムにおける非貿易項目の対外送金に関する源泉徴収について
中国・ベトナムから、国外に非貿易項目送金する場合の源泉徴収課税について解説します。
1.中国
(1)貨物代金と非貿易項目
外国企業が中国に貨物を輸出し、輸入者である中国企業が貨物代金決済を対外決済することに際しては、源泉徴収課税は行われません。
これは、輸入通関時に課税される「関税・増値税および消費税(特定品目に限定)」は、中国企業に対して課税されるものであること、さらには(各国との租税条約にも規定されていますが)国際課税の原則として、「物品売買益に対する企業所得税課税は恒久的施設(PE)がなければ、非居住者に対しては課税しない」ためです。
一方、非貿易項目の場合、PEが無くても所得源泉地は課税権を持っていますので、源泉徴収課税が実施されます。
(2)源泉徴収される税金
対外送金に際して源泉徴収されるのは、「企業所得税・増値税・付加税」の3種類となります。
1)企業所得税率
10%の税率が適用されます(企業所得税法第4条・同法実施条例第91条)。
2)増値税
役務増値税(財税[2016]36号)の基本税率は6%ですので、通常役務に対してはこの税率となります。なお、非居住者に関しては、一般納税人と小規模納税人の区分はありませんので、一般納税人の税率が適用されます。
3)付加税
増値税に対して課税される税金で、城市建設税・教育費付加・地方教育費付加等の総称です。税率は地域により異なりますが、おおむね増値税額の10%前後です。
(3)源泉徴収される税金の負担者
源泉徴収される税額の負担者は契約で決められます。つまり、全額外国企業負担とすること(差引額を対外送金する)も、全額中国企業が負担すること(手取り保証契約の様な形)も、税種毎に取り決めることもできます。なお、中国企業が負担した税金は、報酬として課税所得金額に加算する必要があります。
2.ベトナム
(1)貨物代金と非貿易項目
外国企業がベトナムに貨物を輸出し、輸入者であるベトナム企業が貨物代金決済を対外決済することに際しては、原則として源泉徴収課税は行われません。
これは(各国との租税条約にも規定されていますが)国際課税の原則として、「物品売買益に対する企業所得税課税はPEがなければ、非居住者に対しては課税しない」ためです。ただし、例外として、貨物の販売に付随して、ベトナム国内でのサービス提供が伴う場合などは、PEの有無にかかわらず、源泉徴収課税が行われます。
一方、非貿易項目の場合、PEが無くても所得源泉地は課税権を持っていますので、源泉徴収課税が実施されます。
(2)源泉徴収される税金
企業への対外送金に際して源泉徴収されるのは、原則として「企業所得税・付加価値税」の2種類となります(例外として、税目以外の国庫に納付する料金などが別途生じることがあります)。
1)企業所得税率
販売、サービス内容に応じて、0.1~10%の税率が適用されます(一般税率は20%)。
2)付加価値税
販売、サービス内容に応じて、2~5%の税率が適用されます(一般税率は10%)。
(3)源泉徴収される税金の負担者
外国契約者の負担が原則ですが、源泉徴収される税額の負担者は契約で決められます。つまり、全額外国企業負担とすること(差引額を対外送金する)も、全額ベトナム企業が負担すること(手取り保証契約の様な形)も、税種毎に取り決めることもできます。この際、ベトナム企業が負担した税金は、報酬として課税所得金額に加算する必要があります。なお、ベトナム企業が負担した企業所得税は、損金算入できませんが、付加価値税に関しては控除が可能です。
中国・ベトナムにおける外資企業の減資について
外資企業の減資の可否について解説します。
1.中国
中国では、過去には外資企業の減資は極めて困難でしたが、2020年1月1日の外商投資法施行(外資三法の廃止)以降、事例が増えています。
また、24年7月1日の会社法改定により、無償減資が認められました。
(1)減資の経緯
外資三法には、外資企業は経営期間内には原則として登録資本金を減らしてはならないことが規定されていました。一応、必然性がある場合は、認可機関が認めれば可能という例外が規定されていましたが、原則禁止の前提でした。これが20年1月1日の外商投資法施行(旧外資三法の廃止)により、減資を直接的に禁止する条項は無くなり、減資事例が増加しました。
(2)減資の審査
減資の審査は、所管の市場監督局が対応します。明確な文書基準はありませんが、各地での対応事例から言うと、「減資後の現預金で債務が弁済でき、運用資金も確保できていること」が前提です。よって、直近の貸借対照表等(市場監督局の指示に基づく)を提示し、財務状況の確認の上、受理されます。また、債権者への告知・公告も必要ですので、異議申し立てがないことも前提条件となります。
(3)有償減資と無償減資
有償減資は、実際に出資者に現金を払い戻す減資。無償減資は、資金は動かず、資本金を減額して欠損填補する減資で、24年7月1日の会社法改定で、正式に制度導入されました。無償減資(欠損金の填補)をする場合は、まず任意積立金・法定準備金(通常企業は準備基金)を優先し、その後は資本準備金を使用。それでも欠損が残る場合に、登録資本金の減少(無償減資)が認められます(新会社法第214条)。
また、無償減資後は準備基金・任意積立金が登録資本の50%に達するまで、配当はできません(会社法第225条)。
2.ベトナム
ベトナムでは、減資の可否が会社形態により区別されていましたが、15年7月1日施行の企業法改正以降は、有限会社・株式会社ともに減資が認められています。ただし、有償減資は認められていますが、無償減資は認められていません。
(1)減資の経緯
15年7月1日施行の企業法改正以前は、二人以上社員有限会社(出資者が2名以上の有限会社)・株式会社の減資は認められていましたが、一人社員有限会社(出資者が1名の有限会社)の減資は認められていませんでした。同法改正により一人社員有限会社の減資が認められることになり、会社形態による区別は撤廃されました。21年施行の企業法改正においても、この点は踏襲されています。
(2)減資の審査
減資の審査は、所管の計画投資局(製造業の場合は工業団地管理委員会)が対応します。
減資後、債務弁済に支障が生じないことが前提となりますので、最高意思決定機関(出資者総会・株主総会等)の決議書に加え、直近の財務諸表を提出し、財務状況の証明を行う必要があります。
(3)有償減資と無償減資
ベトナムでは、減資は以下の3つの場合に限定されています(企業法の第68条・3項、第87条・3項、第112条・第5項)。(1)出資比率等に応じた出資者への払い戻しが必要となる有償減資(2)会社の重要決議に賛成しない出資者持ち分の会社買い取りによる有償減資(3)全ての出資がなされなかったことを原因として実際の出資額に合致させるために行う減資――。以上より、資本金の減額により、欠損金を減らすことを目的とする無償減資は認められていません。
以上