中国・ベトナムにおける流通税の納税人区分・駐在員事務所の開設について【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.112
2025-09-16【中越ビジネスマニュアル 第 112 回】
中国・ベトナムにおける借入の総量規制について
1.中国
(1)外債
対外借入は、所管の外貨管理局(一部地域では銀行)で、外債登記をする必要があります。 外債登記可能額は「投注差方式」と「マクロプルーデンス方式」の2種類のうち、一つを企業が選択して、継続適用する必要があります。
なお、2023年よりマクロプルーデンス方式を採用している企業が中長期借入(返済期限が1年超の借入)をする場合は、国家発展改革委員会での備案(届け出)が必要となりました。
●投注差方式
定款に記載された総投資金額から登録資本金額を控除した残額が外債登記可能額になります。 外貨建て短期借入の場合は、残高管理ですので、返済すれば融資枠は復活しますが、それ以外(外貨建て中長期、人民元建ての全ての借入)は累計管理であり、返済しても枠は戻りません。
●マクロプルーデンス方式
調整済借入金(借入額をそのまま使用するのではなく、借入通貨・期間に応じて一定の調整を行います)を現時点では自己資本の3.5倍以内とする制度です。 この方式は、全ての借入に関して残高方式が採用されるため、返済すれば借入枠は復活します。
なお、借入枠は経済動向に応じて、随時調整されます。
(2)中国内借入
中国内の銀行からの借入に対しては、総量規制は適用されません。
(3)親会社保証と保証履行
中国内での借入に関しては、上記(2)の通り、総量規制は適用されません。 ただし、親会社保証付きの借入であり、(中国内子会社が返済不能になったことにより)親会社が保証履行をする場合、保証履行可能額は総量規制(企業が選択している方法に基づき、投注差方式もしくはマクロプルーデンス方式での総量枠規制)の適用を受けます。 なお、「クロスボーダー担保外貨管理規定(匯発[2014]29号)」により、投注差方式を採用している場合、保証履行額が中国法人の前年度会計監査報告書の自己資本の範囲であれば、枠を消費せず、これを超過した場合に適用対象となります。 マクロプルーデンス方式の場合は、このような特例はなく、保証履行額全体が総量規制対象となります。
2.ベトナム
(1)ベトナム外借入(外債)
中長期借入(契約期間が1年を超える借入)は、中央銀行で登記をする必要があります。 中長期借入可能額は「投注差方式」が採られています。
●投注差方式
定款に記載された総投資金額から登録資本金額を控除した残額が中長期借入可能額になります。 残高管理ですので、返済すれば融資枠は復活します。
(2)ベトナム内借入
中長期借入は、「投注差方式」に基づく総量規制が適用されますが、中央銀行での登記は不要です。
(3)親会社保証と保証履行
ベトナム内での借入に関しては、親会社の保証・履行の有無にかかわらず、上記(2)の通り、総量規制が適用されます。 保証履行の結果として、親会社からの中長期借入が生じる場合は、外債として中央銀行での登記が必要となります。
中国・ベトナムにおける外国企業の国内口座・国内企業の国外口座について
1.中国
(1)外国企業の国内口座
外国企業が中国内に口座を開設することは、外貨の場合は「国外機構の国内外貨口座管理に関する問題についての通知(匯綜発[2009]29号)」、人民元の場合は「国外機構の人民元銀行決済口座管理弁法(銀発[2010]249号)」「国外機構の人民元決済口座の開設と使用に関する問題の通知(銀発[2012]183号)」により認められています。
開設された口座は、非居住者口座として管理され、当該口座と居住者口座間の決済は外国決済に準じて扱われ、自由な受け払いができる訳ではありません。
また、口座内の資金の換金、現金の入出金は制限されます。
このように、制限が多い内容ですが、中国内での振込手数料は安く(国内に準じるため)、これがメリットになります。
(2)中国企業の国外口座
「輸出貨物収入の国外留保管理実施に関する問題の通知(匯発[2010]67号)」により、中国企業の国外口座開設ルールが規定されました。
匯発[2010]67号では、口座の開設・運用に関し、所管外貨管理局での登記を義務付けています。
ただし、外貨管理局にヒアリングした結果では、国外口座の登記は困難であり、受理された実績は少ないようです。 外国での口座開設は当該国のルールに従うため、中国の外貨管理局での申請・登記実績の確認は求められないことから、多数の開設事例があります。 ただこのような口座の多くは、中国内の外貨管理局での登記が行われておらず、また中国企業の財務諸表に反映されていない簿外口座となっていると推測されます。
このように、中国の外貨管理規則、税務規則に照らし合わせると、合法性に疑義が生じます。
2.ベトナム
(1)外国企業の国内口座
外国企業がベトナムに進出する際、現地法人設立に関する費用の立て替えが生じますが、2019年9月5日以前は、外国企業は非居住者預金口座の開設・支払いが求められていました。 この口座を利用して支払わなかった場合、立替金の国外への返金が認められなかったためです。 現在はベトナム国外の預金口座からベトナム国内企業に直接支払うことが認められていますので、非居住者預金口座の利用は任意となっています(中央銀行・通達・第06/2019/TT-NHNN号)。
他方、外資企業の居住者口座は、通常決済用の「経常口座」と資本金や借入金などの入出金に利用する「資本口座」に分かれていますが、非居住者口座は、現地企業への支払いに加え、立替金を子会社の資本金や借入金に振り替えることもできるため、経常性、資本性の両側面を有する口座といえます。 ベトナム内での振込手数料は(国内に準じるため)安いため、複数回の支払いが生じる場合はメリットになります。
(2)ベトナム企業の国外口座
「ベトナム居住組織の国外外貨口座の開設及び利用に関する規定(中央銀行・通達・第20/2015/TT-NHNN号)」により、ベトナム企業の国外口座開設ルールが規定されています。
当通達では、口座の開設・運用に関し、中央銀行からのライスセンス取得を義務付けています。 以下のケースにおいて口座開設が認められます。
1.進出国の法律に従い、支店・駐在員事務所の設立および運営ライセンスの取得条件を満たすため。
2.国外の支店・駐在員事務所の運営を支援するため。
3.国外の貸し手との合意に基づく国外融資を受けるため。
4.政府のプログラム下で特に重要な投資の対象となる企業、官民パートナーシップ(PPP)の形で投資を行う企業が国外パートナーとの合意事項を履行するため。
5.国外パートナーとの合意・契約事項、国外建設に関する契約、国外パートナーとの船舶の購入および販売に関する契約を履行するため。
以上