【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.69

2022-05-31

【中越ビジネスマニュアル 第 69 回】

■ 中国・ベトナムにおける外国企業・外国人の不動産購入について

中国でもベトナムでも、外国人の不動産購入は制限されています。両国の概要を解説します。

1.中国

(1)外国企業・外国人の不動産購入

かつては、外国人・外国企業でも、中国の不動産を購入できましたが、「不動産市場に対する外資参入の規範化と管理に対する意見(建住房[2006]171 号)」により、2006 年より購入が原則として禁止されました(その後、建房[2010]186 号により、一部修正)。

ただし、外国企業が中国内に開設した分公司・常駐代表所・事業所および中国内で1年を超過する期間就業・就学する外国人について、自己使用目的の不動産が購入できます。 この場合、外国企業はオフィスのみ(住居は不可)、個人の場合は1戸に限り、購入可能です(注)。

注: 個人が購入する住宅については、「不動産市場における外資参入および管理関連政策の調整に関する通達(建房[2015]122 号)」で戸数制限および就業・就学が1年を超えるという制限が削除されましたが、実務管理は依然として同様です。

なお、上記の通知が施行される前に外国企業が購入した不動産は、現時点では継続保有が認められていますし、その物件を中国企業に賃貸している場合などは、賃貸料の対外送金(中国の借り手から、外国の不動産所有者への送金)も認められています。

(2)例外購入手続き

「外国企業の代表機構の自己不動産」および「1年以上就業外国人の自宅」購入については、銀行に以下の書類を提示して、人民元換金を申請します(匯発[2006]47 号)。

  • 代表機構のオフィス
    不動産売買契約書、中国内の代表機構の登記証明、不動産主管部門が発行する代表機構の販売予約証明、購入物件が自家用に適していることに関する書面確認
  • 就業・就学1年以上となる個人の自宅
    不動産売買契約書、パスポート等の身分証明書、1年以上の就業・就学を証明する雇用契約書もしくは在学証明書、不動産管理部門が発行した当該不動産の販売予約証明等

2.ベトナム

(1)外国組織・外国人の不動産購入

15 年7月1日に施行された「改正住宅法・第 65/2014/QH13 号」により、外国組織・外国人による不動産購入条件は緩和されています。かつては、外国組織(不動産業を除く)に関しては、ベトナムに設立された外資企業が従業員の居住用の不動産を取得することのみ認められていましたが、現在は外国企業の支店・駐在員事務所も取得が可能となっており、利用目的も従業員の居住用に加え、オフィス利用目的での取得も可能です。また、外国人に関しては、改正前は認められていなかったベトナム非居住者の不動産取得も認められています。

ただし、居住用不動産に関しては、外国組織・外国人の取得に関する総量規制があり、集合住宅の場合は、外国組織・外国人が取得できる上限は 30%までとなっています。また、戸建て住宅の場合、市の下部組織に坊(Phuong)という行政単位がありますので、坊と同水準の居住者数を有する地域において 250 戸が上限となります。また、外国組織・外国人が購入できる不動産自体も限定されていますので、そもそも全ての不動産の購入が認められているわけではない点には留意が必要です。

(2)購入手続き

「外国組織」および「外国人」の不動産購入についてのベトナム国内送金は、ベトナムドンのみが認められます。銀行に以下の書類を提示して、送金手続きを行います。

  • 外国組織
    不動産売買契約書、投資登記証明書等のベトナム国内ライセンス、出資者総会決議書(有限会社の総資産の 50%以上の価額の場合)、取締役会決議書(株式会社の総資産の 35%以上の価額の場合)
  • 外国人
    不動産売買契約書、パスポート等の身分証明書、入国許可を証明するビザ等

■ 中国・ベトナムにおける会計監査と確定申告について

外資企業の会計監査と確定申告について、中国とベトナムの状況を解説します。

1.中国

中国では、会計年度は暦年とすることが定められており、企業所得税の確定申告は翌年5月末となります。 外資企業に対しては、かつては独資企業法実施細則・中外合資企業法実施条例(双方失効)により、公認会計士事務所による年度監査が義務付けられていました。また、会社法第 164 条でも会計監査事務所の監査が義務付けられています。

その状況が、2014 年の商事登記制度改革により変わりました。商事登記制度改革とは、煩雑な法人の登記管理制度の合理化を認める全国的な試みですが、実施状況は地域(市)によって異なっています。その一環で、外資企業に対する会計監査が免除される地域が増え、同時に企業所得税確定申告時の監査報告書提示義務が免除されるようになりました。 よって、実務運用上は、非上場外資企業に対する会計監査は強制されていません。

ただし、「貿易投資の利便性と真実性審査の改善の一層の促進に関する通知(匯発[2016]7号)」において、5万米ドルを超過する配当金の対外支払いをする場合は、「配当に対応する利益状況を証明する財務諸表」を銀行に提示する(銀行が審査する)ことが求められています。これは、通常会計士監査報告書が該当するため、配当に際しては監査報告書が依然として必要となります。

2.ベトナム

ベトナムでは、会計年度は暦年が原則ですが、3月末日、6月末日、9月末日を会計年度とする選択も可能です。法人税の確定申告は、「会計年度終了日から 90 日以内」に行うと定められていましたが(租税管理法・第 78/2006/QH11 号・第 32 条)、改正租税管理法・第 38/2019/QH14 号の発効により、20 年7月1日以降は、「会計年度終了日から3カ月目の末日」へと変更されているため、12 月決算の場合は3月 31 日、3月決算の場合は6月 30 日、6月決算の場合は9月 30 日、9月決算の場合は 12 月 31 日が期日となっています。

外資企業に対しては、企業規模や上場されているか否かにかかわらず、監査法人による会計監査が義務付けられています。よって、毎年の決算終了後、法人税の確定申告前に会計監査を行い、確定申告時に、所管税務機関に監査報告書を提出する必要があります。また、配当金の対外支払いをする場合、監査報告書を銀行に提示する必要があります。

以上