【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.70

2022-06-21

【中越ビジネスマニュアル 第 70 回】

■ 中国・ベトナムにおける外資企業の休眠について

休眠とは、行政機関への届出を前提として、会社を休業させ、一定の手続き(税務申告と最低限の行政機関報告)だけで会社を存続させる制度です。今回は中国・ベトナムにおける休眠制度の有無と、対応可否について解説します。

1.中国

(1)現状と実務面での対応

現時点では、中国に休眠制度はありません(個体工商戸に関しては例外的に、会社法に休眠規定が織り込まれています)。 また、会社法・第 211 条には6カ月超の期間、連続して活動を停止した場合、登記機関(市場監督局)は、会社の営業許可証を取り消すことができると規定されているため、長期間の活動停止は、会社登記の抹消につながるリスクがあります。

もちろん、関係機関(市場監督局・税務局)でのヒアリングでは、「収入が無くても、適切に税務申告をすれば問題ない」(税務局)、「適切に年度報告(年1回のオンライン手続き)を行い、かつ会社の担当者と電話連絡ができる場合は通常、営業許可証の取消までは求めない」(市場監督局)との回答でしたので、実際の運用はある程度柔軟なようです。

ただ、休眠の目的は、活動停止により経費を押さえ、経営判断の時間を稼ぐことにありますので、実務面での対応(会社規模を縮小しても、最低限、オフィス家賃や税務申告の手間が伴う)では、十分な効果は期待できません。

(2)休眠制度の開始

上記(1)の状況が、来年より改善される期待があります。 2022 年3月1日に施行された「市場主体登記管理条例(国務院令 2021 年第 746 号)」第 30 条には、休眠に関する規定があります。 ここでは、市場監督局に届出(備案)することで、3年以内の休眠が可能になり、法律文書の送達場所を、住所・主たる経営場所に代替することが認められる(オフィス無しの状態で登記が維持できる)と規定されています。

また、市場監督局も、短期・中期的な重点課題の一つに休眠制度の開始と定着を挙げており、前向きな取り組み方針が見て取れます。 ただ、休眠が認められる場合として、「自然災害、事故災害、公衆衛生問題、社会安全問題により、経営上の困難が生じた場合」と規定されていますので、これが実務上どのように運営されるか、施行後の実務状況を確認する必要がありそうです。

2.ベトナム

(1)現状と実務面での対応

ベトナムでは、投資法および企業法において休眠制度が定められています。

まず、活動を停止する場合、投資者は書面にて投資登記機関(計画投資局・投資登記課)に通知しなければなりません(投資法・第 47 条・第1項)。活動停止の決定から5営業日以内に通知する必要があります(政令・第 31/2021/ND-CP 号・第 56 条・第3項)。

また、活動停止の最長期間は 12 カ月です(同政令・同条・第2項)。

さらに、企業は企業登記機関(計画投資局・企業登記課)に対して、実際に活動を停止する日の3営業日前までに書面にて通知する必要があります(企業法・第 206 条・第1項)。 通知した停止予定期間より前に活動を再開する場合も、再開日の3営業日前までに書面にて通知する必要があります。 なお、企業は、活動停止期間中も、残存する租税・社会保険の納付義務を負い、従業員、顧客、仕入先等への義務は、別途の合意がない限り、契約に従い引き続き負う必要があります(同法・同条・第3項)。活動停止により経費を押さえるためには、従業員との合意に基づき、労働契約の履行を一時停止するといった措置(労働法・第 30 条・第1項)や、事前に小規模なオフィスに住所を移転し家賃負担を軽減するといった対策が必要となってきます。

■ 中国・ベトナムにおける持分譲渡について

持分譲渡は、撤退・買収に関して重要な組織再編の方法ですが、その手続きと注意点について解説します。

1.中国

(1)持分譲渡手続き

外資企業の持分譲渡は、かつては商務主管部門の許可・備案が義務付けられていましたが(外貿易経済合作部・国家工商行政管理局[1997]外経貿法発第 267 号・失効)、外商投資法施行に伴い、非ネガティブリスト外資企業は、同部門での手続きは不要となりました。非ネガティブリスト外資企業の場合はまず、所管の市場監督局で営業許可証変更(出資者・社名・定款内容など)申請を行い、その後、各種登記の変更手続きを行います。

(2)代金決済

持分譲渡代金は当事者間(新旧出資者間)で決済しますので、中国外の企業間(例:日本企業間)であれば、中国の外貨管理は関係ありません。

一方、日本企業が中国企業(在中外資企業を含む)に譲渡する場合、持分譲渡代金は中国から日本に対外送金されることになります。この送金は、かつては外貨管理局の許可が別途必要でしたが、「直接投資外貨管理政策の一層の改善と調整に関する通知(匯発[2012]59 号)」により、外貨管理局の許可は不要となりました。

(3)納税

外国企業が現地法人の出資持分を譲渡し、譲渡益が出る場合(譲渡額―出資額がプラスになった場合)、企業所得税法第3条・第4条・同法実施細則第 91 条に基づき、「譲渡益に対して 10%の企業所得税が課税」されます。

この際、取引価額の妥当性検証のため、所管税務機関より、資産鑑定評価報告書の提示が求められる場合があります。

2.ベトナム

(1)持分譲渡手続き

持分譲渡では、有限会社の場合、計画投資局において、企業登記証の変更手続きが必要であり(企業法・第 30 条)、株式会社の場合は、外国株主の変更通知が必要となります(企業法・第 31 条)。その後、有限会社、株式会社ともに、投資登記証の変更手続きが必要となります(投資法・第 41 条)。

また、上記手続きの前段階として、外資企業の持分譲渡では、外資条件付き投資分野で活動する企業への外国投資家の保有割合が増加する場合、外国投資家・外資企業の保有割合が定款資本の 50%超の企業で外国投資家の保有割合が増加する場合、国防・治安維持に影響する区域の土地使用権を有する場合、計画投資局での事前登録も求められています(投資法・第 26 条)。

(2)代金決済

ベトナム非居住者間、もしくは、ベトナム居住者間の持分譲渡代金は当事者間(新旧出資者間)で決済します。ベトナム非居住者であるベトナム外の企業間(例:日本企業間)であれば、ベトナムの外貨管理は関係ないため外貨での決済が可能であり、ベトナム居住者であるベトナム内の企業間(外資企業を含む)であれば、ベトナムドンでの決済が必要となります。

一方、ベトナム居住者とベトナム非居住者間の持分譲渡代金は当事者間の決済ではなく、持分譲渡対象企業の資本口座を通じて決済する必要があります(中央銀行通達・第 06/2019/TT-NHNN 号)。

(3)納税

外国企業が現地法人の出資持分を譲渡した場合、原則として、財務省通達・第 103/2014/TT-BTC 号・第 13 条に基づき、「譲渡額に対して 0.1%の法人税が課税」されます。 この際、取引価額の妥当性検証のため、所管税務機関より、資産鑑定評価報告書の提示が求められる場合があります。

以上