【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.71

2022-07-04

【中越ビジネスマニュアル 第 71 回】

中国・ベトナムにおける税関信用ランクについて

税関の企業に対する管理制度を解説します。

■ 1.中国

(1)税関ランク

税関は、貿易を行う企業をそのパフォーマンスに応じてランク付けしています。

信用ランクは過去に何度も変更されていますが、「税関登録登記・備案企業信用管理弁法(税関総署令 2021 年第 251 号)」により、2021 年 11 月1日より、再度制度が変更されています。

<信用ランクの推移>

  • 1)14 年以前
    • AA・A・B・C・D類の5分類で、通常企業はB類とされていました。
  • 2)14 年 12 月1日~ 21 年 10 月 31 日
    • 高級認証企業、一般認証企業、一般信用企業、信用喪失企業の4分類に変更されました(税関総署令[2014]225 号)。
    • 変更に際しては、旧AA類は高級認証企業、旧A類が一般認証企業、旧B類が一般信用企業、旧C・D類が信用喪失企業というように、自動的に再分類されました。
  • 3)21 年 11 月1日~
    • 高級認証企業、信用喪失企業、その他の企業という3分類になります。
    • また、信用喪失企業の中で、違反状況が著しい場合は、重要信用喪失企業リストに組み入れられます。
(2)制度変更の影響

21 年 10 月 31 日までの制度では、高級認証企業と一般認証企業がAEO(Authorized Economic Operator)であり、税関優遇措置の適用対象でした。これが今回の制度改定で、高級認証企業のみとなります。 高級認証企業の輸出入検査率は、通常企業の 20%以下と規定されているほか、通関手続き優先、税関担保免除申請の許可、税関調査の回数軽減などの便利化措置が提供されます。 今回の制度変更で一番問題となるのは、旧一般認証企業がどのように扱われるか(高級認証企業になるか、その他企業になるか)という点ですが、税関総署令 2021 年第 251 号には、この点が明記されていません。 税関総署は、制度改正の解説に際して、「一部の既存中間ランク企業(一般認証企業)に対しては、今までの便利化措置を保留、もしくは、引き上げる」方針を公開していますが、この点は制度変更後の個別状況を確認する必要があります。

■ 2.ベトナム

輸出入を行う企業は、「関税法・第 42 条・第1項」に基づく一定の条件を満たすことにより、通関時における優遇手続きを享受することができます(同法・第 43 条)。

(1)優遇制度の適用条件

同法・第 43 条に規定される優遇制度の適用には、第 42 条・第1項に列挙される以下の全ての条件を満たす必要があります。

  1. 連続する2年間における関税法および税法の厳守
  2. 規定値に達する年間輸出入額(政令番号・第 08/2015/ND-CP 号・第 10 条・第4項に別途規定)
  3. 電子申告に基づく通関および税務申告の実施、税関当局のネットワークに接続された輸出入活動の管理のための情報技術プログラムの保有
  4. 金融機関経由での支払い
  5. 関連する内部統制システムの保持
  6. 会計および監査規定の厳守
(2)優遇制度

同法・第 43 条に規定される優遇制度は以下となります。

  1. 通関書類に関連する書類の検査免除および通関手続き実施時における実物検査の免除。ただし、法令違反の兆候が見られる場合、もしくは、法令順守状況の評価の必要性から実施する無作為検査の場合はこの限りでない。
  2. 不完全な通関書類、もしくは、通関書類の代替書類による通関手続きの実施。ただし、通関申告者は不完全な通関書類による登録、もしくは、通関書類の代替書類による提出から 30 日以内に、完全な通関書類および通関書類に関連する書類を提出しなければならない。
  3. 税法に基づく、貨物に関わる税務手続きの優先実施。

中国・ベトナムにおける外国企業の国内取引関与について

外国企業が中国・ベトナムの国内取引に関与することの可否について解説します。

■ 1.中国

中国内で売買行為を行う場合は、中国内での卸売り流通権が必要ですが、外国企業はこれが取得できません。よって、外国企業の中国内取引関与は不可となります。 また、外貨管理上も、外国企業と中国企業間の代金決済は通関決済一致の原則が前提となるため、純粋な中国内販売は、通関実績が無いため決済が認められません(注)。

注:貨物代金決済において、最低限提出が認められているのは、中国企業の外国からの外貨回収は「銀行に対する入金申請書」、外国企業への対外決済の場合は「契約書・インボイス・輸入通関単のいずれか一つ」(匯発[2012]38 号)です。ただし、銀行が必要と認めれば、その他の書類を要求することができ(匯発[2020]14 号)、国内取引であることが分かると、決済が受理されません。

ただし、以下のような例外があります。

(1)保税区域を活用した場合(保税区域游)

中国企業が保税区域(保税物流園区・保税物流中心B型など)に搬入し、いったん外国企業が所有権を得た上で再度搬出することで、外国企業が売買に関与することができます。このような取引は、保税区域游などと呼ばれています。 この方法であれば、「保税区域搬入時に輸出通関をする」、「保税区域から搬出する時に輸入通関をする」ことで、通関実績を得ることができます。かつ、保税区域内では外国企業が貨物の所有権を得ることができるので、オペレーションは成立します。

ただし、保税区域からの搬出時(輸入時)に、輸入関税・増値税が課税される点に注意する必要があります。

(2)転廠(深加工結転)

転廠とは、加工貿易企業間の国内貨物移送です。加工貿易とは、中国企業が原材料を輸入し、加工後の製品を輸出する行為ですので、調達(輸入)・販売(輸出)ともに、外国企業との契約があります。ただし、中国内で一次加工、二次加工が行われる場合、税関手続き上は、契約に基づき輸出入通関をした上で、貨物を国内で移送するのが転廠です。 転廠では、輸出入通関が行われるため中国企業(加工貿易企業)と外国企業の決済も可能です。

■ 2.ベトナム

ベトナムは中国と異なり、外国企業がベトナム内の売買に関与することが認められています。具体的には、以下の通りです。

(1)ベトナム内での売買

ベトナム内で貨物が受け渡しされる取引の間に、外国企業が売買当事者として関与することは、看做し輸出入取引(オンザスポットエクスポート・インポート)として認められています(政令・第 08/2015/ND-CP 号・第 35 条1項)。看做し輸出入取引とは、物流はベトナム国内のみ(ベトナム国内企業から他のベトナム国内企業への納入)であるが、商流として、いったんベトナム国内企業からベトナム国外の外国企業に売却をし、再度他のベトナム国内企業に売却される売買形態を指します。

(2)国内取引に関する対外支払い

上述の通り、ベトナムでは看做し輸出入取引が認められていますが、外国企業がベトナム国内でのサービス提供を通じて収益を得る活動となるため、ベトナム企業から支払われる対価に対して外国契約者税が課税されます(財務省通達・第 103/2014/TT-BTC 号)。外国契約者税は、法人税と付加価値税(VAT)などから構成されており、提供されるサービス内容に応じて税率が定められています。看做し輸出入取引から得る対価に対しては、法人税1%が課されますが、付加価値税は課されません。ベトナム国内企業は、その対価支払い時に外国契約者税を源泉徴収して申告納付します。

以上