【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.72

2022-08-03

【中越ビジネスマニュアル 第 72 回】

中国・ベトナムにおける外国人の銀行口座について

外国人の銀行口座開設と利用制限について解説します。

■ 1.中国

(1)銀行口座の開設

外国人の銀行口座開設は、2017 年7月1日より管理強化が実施されています。
「非居住者金融口座の税務状況調査管理弁法(国家税務総局・財政部・人民銀行・銀行業監督管理委員会・証券監督管理委員会・保険監督管理委員会公告 2017 年第 14 号)」は、非居住者が中国で銀行口座を開設する場合、居住地国の納税番号の提示を義務付けています。この弁法は非居住者の口座開設を禁止するものではありませんが、実務上、管理強化が実施され、中国の居留許可を持たない外国人は銀行口座が開設できなくなりました。
居留許可を持つ外国人が銀行口座を開設する場合、パスポート情報・居留証情報の登録と同時に、場合によっては国籍地の納税番号提示が必要となります。

(2)中国で発行されたカードの国内使用

中国で発行された銀行カードの国内使用制限は以下の通りです。

1)一類カード

一類カードとは、同一銀行で発行した1枚目のカードを指し、以下の通りの引き出し制限が実施されています。

  • ATMでの引き出し:1日2万元以内
  • 窓口での引き出し:制限はないが、1日5万元以上の場合は予約が必要
  • 振り込み:銀行により異なる
2)二類カード

二類カードとは、同一銀行で発行する2枚目以降のカードを指し、以下の通りの引き出し制限が実施されています。

  • ATMでの引き出し:1日1万元以内
  • 振り込み:1日1万元、年間累計 20 万元以内
(3)中国で発行されたカードの国外使用

「銀行カードの国外での大口現金引出取引の規範化に関する通知(匯発[2017]29 号)」により、17 年 12 月 29 日より、国外での現金引き出しは1人1日1万元以内、かつ年間(暦年)1人 10 万元以内に制限されています。
これを超過する引き出しを行った場合、当該年度と翌年度の国外引き出しが暫定的に禁止されます。

■ 2.ベトナム

(1)銀行口座の開設

ベトナムでは、居住者、非居住者ともに口座開設は認められています。居住者が口座を開設する場合、パスポート、ビザ(もしくはレジデントカード)に加え、場合によっては、労働契約書、労働許可書、給与明細の提示が必要となります。非居住者が口座を開設する場合は、パスポート、ビザ(もしくは入国スタンプ)の提示が必要となります(日本国籍者等にはベトナムの滞在期間が 15 日以内であればビザが免除されていますので、ビザの代わりに入国スタンプが確認されます)。

(2)ベトナムで発行されたカードの国内使用等

ベトナムで発行された銀行カードの国内使用制限等は以下の通りです。

  • ATMでの引き出し:1日1億ベトナムドン(VND)以内
  • 窓口での引き出し:制限はないが、外貨での引き出しの場合、支店規模により十分な外貨を保有していない恐れがあるため事前の確認・予約が必要
  • 国内振り込み:ベトナム国内送金は原則可能だが、場合によりエビデンスの提示が必要
  • 国外振り込み:口座に振り込まれた給与の国外送金は可能
  • 預け入れ:外国人の口座へは現金の預け入れは不可
(3)ベトナムで発行されたカードの国外使用

「中央銀行通達・第 26/2017/TT-NHNN 号」により、18 年3月3日より、国外での現金引き出しは、1日 3,000 万VND以内に制限されています。

中国・ベトナムにおける貨物代金決済の原則について

中国とベトナムの貨物代金決済の原則について解説します。

■ 1.中国

(1)貨物代金決済の原則

貨物代金決済の根拠となるのは、「貨物貿易外貨管理法規に関する問題の通知(匯発[2012]38 号)」および「経常項目外為業務ガイド(匯発[2020]14 号)」となります。
ここでは、貨物代金決済に際して、銀行に提示する書類は以下の通り規定されています。

1)輸入代金決済

インボイス、契約書、通関単のいずれかの原本。
ただし、銀行が必要を認めた場合は、その他の書類を要求することができます(注)。

注: 「銀行に対する貿易証憑審査利便化作業を展開する事に関する通知(匯発[2017]9号)・失効」により、1件当たり 10 万米ドル超の輸入貨物代金決済に関しては、輸入通関単の提示を義務付けました。この9号通知は、匯発[2020]14 号の施行と同時に廃止されましたので、輸入通関単の提示を求める外貨管理文書はありませんが、銀行判断で通関単、その他の書類が求められる場合があります。

2)輸出貨物代金の入金

銀行に申請書を提示すれば入金可能です。なお、銀行が必要に応じて追加書類を要求できることは、輸入の場合と同様です。
当該企業の直近 12 カ月の通関実績と貨物代金決済の乖離(かいり)がおびただしい場合は、外貨管理局の立入検査を受ける可能性があります。

(2)輸出入ユーザンス、輸出代金前受け金、輸入代金前払い金

ユーザンスの定義は、通関から 90 日超経過後に代金の受け払いが行われる取引です。
前受け、前払いの定義は、通関の 30 日超前に代金決済が行われる取引であり、双方、オンラインで外貨管理局に報告する必要があります(L/C付取引、少額取引も同様で例外なし)。
その上で、以下の基準に達した場合は、外貨管理局の立入検査を受ける可能性があります。

  • 輸出代金前受け金、輸入代金前払い金、ユーザンス輸出・輸入の何れかの残高比率(個々の残高と、直近 12 カ月の輸出代金決済もしくは輸入代金決済の比率)が 25%を超過した場合。
  • 期間1年以上の貨物代金前受け・前払い、輸出入ユーザンスの発生比率(個々の取引額と、直近 12 カ月の輸出代金決済もしくは輸入代金決済の比率)が 10%を超過した場合。

■ 2.ベトナム

(1)貨物代金決済の原則

ベトナムの貨物代金決済の根拠は、「外国為替管理法・第 28/2005/PL-UBTVQH11 号」となります。ここでは、居住者(ベトナム企業)・非居住者(外国企業)間の取引に関する対外決済(同法・第6条)、および認可された金融機関にて、対外決済を目的とする外貨の購入が認められています(同法・第7条・第1項)。また、貨物の輸出代金については、認可された金融機関の外貨口座での受領が義務付けられます(同法・第7条・第2項)。
貨物代金決済に際して、銀行に提示する書類は以下の通り規定されています。

1)輸入代金決済

輸入貨物代金の支払いについては、輸入通関証明・契約書・インボイスを銀行に提示する必要があり、輸入代金前払いについては、契約書・インボイスを銀行に提示する必要があります。

2)輸出貨物代金の入金

輸出貨物代金・輸出代金前受け金の入金に際しては、特段の書類提出は不要ですが、金額が相対的に高額な場合(明確な金額基準はない)、着金時に銀行より内容確認(資本性の入金か、収益性の入金かの確認)を求められる場合があります。

(2)輸出入ユーザンス、輸出代金前受け金、輸入代金前払い金

ベトナムでは、ユーザンス・前受け・前払いに対して、明確な比率制限などは実施されていません。

以上