【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.81

2023-02-21

【中越ビジネスマニュアル 第 81 回】

中国・ベトナムにおける国外投融資について

中国・ベトナムから国外への投融資について解説します。

■ 1.中国

1対外投資

中国からの対外投資は、中国国家発展改革委員会(発改委)と商務主管部門双方の手続きが必要となります。この手続きは独立しており、同時進行をすることもどちらか一方を先行させることもできます。

1)発改委での手続き

対外投資に関する発改委の根拠法は、「対外投資管理弁法(国家発展改革委員会令 2017 年第 11 号)」です。ここでは、敏感性プロジェクト(中国と国交がない、戦乱状況にある国家に対する投資もしくは発展改革委員会の敏感業種目録に規定する業種)については、発改委での許可取得が義務付けられており、それ以外は備案(届け出)手続きとなります。

2)商務主管部門での手続き

対外投資に関する商務主管部門関連手続きの根拠となるのは、「国外投資管理弁法(商務部令 2014 年第3号)」と「国外投資の方向性の更なる指導と規範化に関する指導意見(国弁発[2017]74 号)」です。

ここでは、敏感な国家に対する投資(中国と国交を結んでいない国家および国連の制裁を受けている国家)、敏感な業界に対する対外投資(中国が輸出を制限している製品・技術に関するものおよび複数の国家の利益に影響を与える業界)については、商務主管部門での許可取得が義務付けられ、それ以外は備案が要求されています。

2対外融資

国外貸付の根拠となるのは、「国内企業の人民元対外貸付業務関連事項の一層の明確化に関する通知(銀発[2016]306 号)」、「外貨管理改革の一層の推進と真実性・合法性審査の改善に関する通知(匯発[2017]3号)」、「クロスボーダー人民元政策の一層の改善による貿易・外国投資の安定化支持に関する通知(銀発[2020]330 号)」となります。

対外融資に際しては、クロスボーダー人民元・外貨ともに、所管外貨管理局での事前登記が必要となります。

また、融資が可能となるのは、設立後1年以上が経過した企業であり、相手先(国外の借入企業)は、融資者と直接・間接の出資関係がある企業に限定されます。

国外貸付金額は、直近の会計監査報告書に記載された純資産の 50%が上限となります。

■ 2.ベトナム

1対外投資

ベトナムからの対外投資は、国会承認案件、政府承認案件、その他案件に分けられます(投資法・第 56 条)。国会・政府承認案件に関しては、各承認後に計画投資省での申請手続きを行います。その他案件に関しては、国会・政府の承認手続きは不要ですので、計画投資省にのみ申請手続きを行います(投資法・第 61 条)。

1)国会・政府での手続き

国会の承認手続きが必要な案件は、「20 兆ドン以上の投資資本を有するプロジェクト」、「国会の決定を必要とする特別な制度・政策の申請を要するプロジェクト」が該当します。政府の承認手続きが必要な案件は、「銀行、保険、証券、報道、ラジオ、テレビ、通信分野における 4,000 億ドン以上の投資資本を有するプロジェクト」・「前記以外の分野における 8,000 億ドン以上の投資資本を有するプロジェクト」が該当します(国会承認案件は除く)。

2)計画投資省での手続き

国会・政府承認案件に関しては、「投資承認書」・「投資者の対外投資決定書」を計画投資省に提出することで、対外投資登記証明書が発給されます。その他案件に関しては、「対外投資申請書」、「投資者の投資登記証」、「投資者の企業登記証」、「投資者の対外投資決定書」、「対外投資用の外貨準備にかかる誓約書」を提出します。銀行、保険、証券、報道、ラジオ、テレビ、通信、不動産分野に関しては、別途関連当局から条件具備にかかる証明書が求められる場合があります。

2対外融資

ベトナムでは国外貸付の根拠となる規定がないため、現在中央銀行が草案を作成しています。草案では、貸付を行う組織は、不良債権および国外債務の不履行が無く、少なくとも5年間の黒字企業であり、貸付申請前の2年間に税額の未納がないこととする条件が提示されています。


中国・ベトナムにおける駐在員事務所の債権代理回収について

本店(日本企業)の債権を、駐在員事務所が代理回収できるかについて解説します。

■ 1.中国

日本企業の中国企業に対する債権が回収不能となった際に、中国内の支払いに限定して応じられる場合があります。もちろん、中国の外貨管理上、貨物代金決済については、通関と決済の一致が求められますし、異種通貨での支払いは外貨管理条例に違反します。よって、輸入貨物代金を中国内で人民元払いする行為は、中国企業側では問題となります。一方、受領する駐在員事務所(常駐代表処)側を考えると、中国内での人民元の受領となるため、外貨管理上の問題はなく、考慮すべきは、このような債権代理受領行為が、常駐代表処の活動範囲に抵触するか否かとなるかと思われます。

常駐代表処の活動範囲に関する法的根拠は、「外国企業の常駐代表機構登記管理条例(国務院令[2010]584 号)」ですが、ここには出張所は直接的な営業活動に従事せず連絡活動を主とすることが規定されているだけで、代金回収が補助的な活動に含まれるかどうかについての根拠となる記載はありません。

ただし、常駐代表処が入金するのはあくまでも、本店(外国法人)からの経費送金のみというのが通常概念であり、営業債権の代理入金は補助的行為とは言えないと考えるのが自然でしょう。このため、恒常的な債権の代理入金は常駐代表処の営業範囲に抵触すると、関係機関(市場監督局等)から判断される可能性が高く、避けるべきです。

ただ、例外的かつ少額の入金については、上記の通り関連法規に明確な記載がなく、絶対に不可とも言い切れません。

よって、このような例外的な対応を行う場合は、状況に応じて、関係機関の意見も聞きながら対応を決めるしかないということになります。

■ 2.ベトナム

ベトナムでの駐在員事務所の活動範囲は、「連絡活動」、「市場調査」、「外国企業の事業促進」のみ認められていますので、いわゆる営業活動は行えません。特に 2016 年3月 10 日以降は、「外国企業とベトナム企業間で締結された契約内容の履行状況確認業務」も活動範囲から除外されており、活動範囲はより限定されてきています。従って、上記業務しか行えない駐在員事務所が債権の代理回収を行うことは困難であると考えられます。また、駐在員事務所が入金するのはあくまでも、本店(外国法人)からの経費送金のみというのが通常概念であり、営業債権の代理入金は「連絡活動」もしくは「その補助的行為」とは言えないと考えるのが自然でしょう。このため、恒常的な債権の代理入金は駐在員事務所の営業範囲に抵触すると、関係機関(商工局・税務局)から判断される可能性が高く、避けるべきです。また、投資法・第6条では、債権回収業は禁止事業とされていますので、禁止事業に関する活動を行ったとみなされることを避けるためにも、債権の代理回収は行うべきではないと考えられます。

以上