外国企業の中国内取引関与 執筆日:2017年6月10日

2020-05-30

外国企業の中国内取引関与

外国企業(例えば、日本企業)が、中国内の商流の売買当事者となれないか、というご質問をよく受けます。

結論から言うと、加工貿易企業の転廠、保税区域遊等の特例を除いて対応できませんが、その理由と実務的なポイントを解説します。

1.外国企業の中国国内売買が認められない理由

貨物が純粋に中国内で売買される取引(保税区域を経由しない取引)に関して、中国企業・外国企業間で決済をしようとしても、原則として銀行審査が通りません。

やはり、中国内の物品売買は、国内流通権が必要であり、これを所有しない外国企業は商流に関与できないというのが理由と思料されます。

実務的な面ですが、2012 年 8 月 1 日の貨物代金決済改革(匯発[2012]38 号)より、外国企業との貨物代金決済時に、通関実績を提示する必要はなくなりました。更に、貨物代金の入金であれば、銀行に申請書を提示するだけで入金が可能です。この状況下、どの様に国内商流に関する代金決済である事を銀行が把握するか、というご質問を受ける事がありますが、状況は、以下の通りです。

① 代金の入金

中国企業が、外国企業から貨物代金を入金する場合、銀行には申請書を提示するだけですが、その際に、取引番号の申告が必要となります。これは、一般貿易(121010)、進料加工貿易(121020)、保税区域取引(121030)等の様に、取引の形態に応じて番号が決められていますが、中国国内取引に関する番号は有りません。このため、取引内容を説明すると、通常は、(代金を受領した中国企業は)返金を指示されます。

② 代金の支払い

中国企業が外国企業に対して貨物代金を支払う場合、「輸入通関単、契約書、インボイス」の何れか一つを提示する事となっています。国内取引の場合、当然、輸入通関単は有りませんが、契約書、インボイスでも、中国内取引に関わる貨物代金の対外決済である事は明白であるため、支払いは認められません。

更に、「銀行に対する貿易証憑審査利便化作業を展開する事に関する通知(匯発[2017]9 号)」により、2017 年 5 月 1 日から、輸入貨物代金決済を行うに際してはり、銀行が企業の輸入通関データを確認する事が義務付けられています(1 件当たり US$10 万超は強制、それ以下の場合は任意)。

その意味では、輸入代金決済に関しては、以前の核銷制度に準じた手続(輸入通関実績の確認)が義務付けられた事になり、更に、管理は強化されています。

2.例外的な取引

中国国内商流であっても、外国企業が関与できる例外的な取引は、以下の通りです。

① 転廠(深加工結転)

転廠とは、加工貿易企業間の保税形態での中国内移送取引を指します。

加工貿易とは、輸出入契約(原材料輸入契約・製品販売契約)の双方がある事が条件になりますので、一次加工を行う加工貿易企業も、二次加工を行う加工貿易企業も、貿易契約がある事になります。通関手続を、この契約に基づいて行った上で(輸出入通関をした上で)、便宜的に国内の保税貨物移送を認めるのが転廠ですので、この形態であれば、外国企業が国内移送取引に関して売買を行っている事になり(但し、輸出入通関が伴うため貿易取引扱い)、決済も可能となります。

② 保税区域遊

保税区域有とは、中国国内貨物を保税区域(主に、保税物流園区・保税物流中心 B 型が活用される)に搬入し、再度、搬出の上、国内に戻す取引です。

この形態であれば、搬入・搬出時に輸出入通関が行われるため、(更に、保税区域内では外国企業の貨物の所有権移転が可能であるため)売買関与は可能となります。

但し、再輸入通関時に、純粋な国内取引であれば納付が不要な関税が課税される(再輸入時に引き取るのが加工貿易企業であれば保税輸入可能ながら)、通関費用が発生する等、コストが高くなるため、採算的には、この様な取引は望ましくありません。