輸出還付が制限される場合【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.223

2024-05-16

【中国ビジネストレンド】輸出還付が制限される場合

増値税の一般納税人が、輸出する場合、輸出還付が受けられます。
ここでは、その輸出還付が制限される(受けられない)場合に付いて、代表的なケースを、理由を含めて解説します。

1.輸出者が小規模納税人の場合

増値税の輸出還付が受けられるのは、一般納税人に限定されますので、小規模納税人の場合は輸出還付が受けられません(仕入控除も不可です)。
小規模納税人が輸出する場合、免税措置が適用されます。
つまり、輸出還付は受けられず、仕入増値税は原価処理が必要となります。

2.商業企業・生産型企業兼業の場合

生産型企業が卸売り流通権を持っている場合、つまり、営業許可上、兼業の免許を持っている場合、他社製品を輸出しても、増値税の輸出還付が受けられません。
これは、増値税輸出還付の制度欠陥ともいえる状況によるものです。
「外商投資非商業企業が流通業務を経営範囲に加える際の問題に関する通知(商資函[2005]第 9 号)」により、非商業企業(生産型企業など)が経営範囲を追加して、卸売流通権を取得できる事が規定されていますので、営業許可管理上は、製造業と卸売流通業の兼務が可能であり、その実例は多数存在します。
但し、この様な兼業免許を持っていている場合でも、増値税の輸出還付方式は、製造業方式(免税控除還付方式)と卸売流通業方式(個別対応方式)の併用は認められず、何れか一つを選択しなくてはいけません。
生産型企業が卸売り流通権を併せ持つ場合、通常は、製造業方式を採用する事になりますので、自社製造製品の輸出還付のみが認められます。
つまり、他社製品を輸出しても増値税輸出還付が認められませんので、この点に注意する必要が有ります。

尚、「輸出貨物・役務の増値税及び消費税に関する通知(財税[2012]39 号)」・付属資料 4 には、生産型企業のみなし自社製品(自社製品とみなして増値税輸出還付を受けられる貨物)に付いての規定が有りますが、実務上、この認定を受けるのは困難です。

3.みなし国内販売

「輸出貨物・役務の増値税及び消費税に関する通知(財税[2012]39 号)」・七に記載された輸出貨物に関しては、(輸出取引であるにも拘わらず)国内売上と見なして、販売に関する増値税が徴収されます。
諸条件に付いての記載は割愛しますが(必要が有る方は、39 号通知をご参照下さい)、輸出が奨励されていない貨物の輸出、書類不備、虚偽書類、不正行為等が有った場合が該当します。

4.貨物代金を受領しない場合

増値税輸出還付請求権は、輸出通関を行った時点ではなく、「輸出通関を行った上で、輸出貨物代金を回収した時点」で確定します。
かつては、輸出通関を行い、外貨の回収をした段階で、外貨管理局が核銷単と呼ばれる証明書類(外貨回収証明)を発行し、これを、税務機関に提出する事で、輸出還付が受けられました。これが、外貨核銷制度の廃止により(匯発[2012]38 号)、核銷単も廃止され、還付手続も変更されました。
現在では、国家税務総局公告 2013 年第 30 号に基づき、通常企業は、輸出後、先に還付が受けられます。その上で、増値税輸出還付の確定申告時(翌年の 4 月末)に、輸出還付を受けた取引全ての入金証明を提出する必要が有り、これができない場合は、還付金の返却が求められます。更に、輸出外貨の回収率が悪い場合(30 号公告では、回収率 70%未満と規定されていましたが、現在は、この比率は廃止されています)は、要注意企業となります。
このため、無償輸出は、増値税還付が受けられないだけでなく、その後の還付手続に悪影響を与えるため、注意が必要です。
尚、「輸出還付確定申告期限までに、貨物代金を回収できない輸出ユーザンス」、「輸出代金とクレーム金の相殺によって生じる貨物代金回収不足」は、所管税務機関の事前確認を取得すれば、外貨の回収と見なされる事が、30 号公告には定められています。

5.保税区を経由する場合

保税区に国内搬入をした場合、輸出通関は行われますが、輸出還付は受けられません(他の保税区域は還付可能)。これは、財税[2012]39 号に定める見なし輸出(保税区域への搬入であるが、輸出と見なして増値税輸出還付が受けられる場合)の対象保税区域に、保税区が指定されていないためです。よって、中国から保税区域経由の輸出に付いては、保税区以外の保税開発区を使用する必要があります。また、保税区の倉庫を使用する必要が有る場合は、まず、保税物流園区(保税区に隣接する、還付機能を持つ保税開発区)に搬入した後に、保税区に保税転送する方法を採用する必要が有ります。
また、その他の保税区域への搬入の場合でも、保税区業が、中国内企業に貨物代金を支払うと、輸出還付が認められませんので(財税[2012]39 号に定める見なし輸出は、保税区以外の保税区域に搬入し、且つ、保税区以外の保税区域の企業、若しくは、外国企業が貨物代金を支払った時と定められているため)、注意が必要です。

6.保税区法人が加工委託をする場合

保税区企業が、区外(中国内)企業に対して、加工貿易を委託する場合があります。この場合、区外の加工企業は、輸出貨物代金を保税区企業から回収する事になりますが、この場合、「外国企業からの回収ではないため」増値税の輸出還付が受けられません。この管理は、地域差があり、還付が受けられている場合もありますが、リスクが存在する事は認識する必要が有ります。

水野コンサルタンシーグループ代表 水野真澄