中国からの非貿易項目対外送金【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.272
2025-10-09中国からの非貿易項目(フィー・コミッション・ロイヤルティ等)対外送金
中国から、日本、その他の海外に業務委託料などを送金するに際しては、2013年より、US$5万超の場合は所管税務機関での備案が義務付けられています。備案は登録の意味ですので、法律上は審査不要(行政機関は、書類の不備等がなければ受理する)を意味しますが、実際には審査が行われています。また、税務機関が審査することで、US$5万超の対外送金が、税務リスクを増加させる懸念があります。
過去には、(外貨ではなく)クロスボーダー人民元で決済する場合は、通常企業は備案が不要であり、これが一種の抜け道になっていましたが、2023年に制度改定され、原則として、外貨・人民元の対外決済条件は同様となりました。
1.税務機関での事前届出義務
2013年9月1日に「サービス貿易等の項目の対外支払税務備案に係る問題についての公告(国家税務総局・国家外貨管理局公告2013 年第40 号)」が施行され、国内機構・個人が1件当たりUS$5万超のサービス項目の対外送金を行う場合、主管税務局での事前登記(備案)が義務付けられ、事前登記証(備案証)を銀行に提示する事で送金が認められる様になりました。
つまり、非貿易項目に関する、高額対外支払い(US$5万超)は、外貨管理局ではなく、税務局に、実質的な許可権限が付与されています。
非貿易項目には、業務委託料、コミッション、ロイヤルティ、物流費、旅費、保険料、持分譲渡代金など、各種が含まれますが、コミッション、保険料、賠償金、その他は、金額がUS$5万を超過しても、所管税務機関での備案が免除され、銀行審査のみとなります。
2.人民元による対外決済
上記40号公告は、国家外貨管理局と国家税務総局が公布したものですので、外貨の対外決済には適用されますが、人民元を所管する人民銀行が関与していないため、クロスボーダー人民元決済には適用されていませんでした。
人民元対外決済の場合は、「銀行クロスボーダー人民元業務の業務展開・サービス貿易及びその他経常項目の業務展開規範(改定前は2021年版)・失効」が参考にされており、ここでは、信頼できる顧客(中国語:可信客戸)の場合は、一定基準(40万元)を超えても税務機関での備案証の提示は不要。注意を要する顧客(中国語:関注顧客)のみ、備案証が要求されていました。
つまり、非貿易送金時の抜け道になっていたため、2023年4月17日に「銀行クロスボーダー人民元業務の業務展開・サービス貿易及びその他経常項目の業務展開規範(2022年版)」が公布され、信頼できる顧客でも、1回あたりの対外送金額が、40万元を超過する場合は、外貨と同様、所管税務機関での備案が必要となりました。
外貨による対外送金との違いは以下の通りです。
1)信頼できる顧客と注意を要する顧客
1件当たりの対外送金が40万元以下の場合、信頼できる顧客であれば、税務機関での備案証の提示は不要ですが、注意を要する顧客は必要となります。
2)賠償金
賠償金(クレーム金の対外送金)に付いては、外貨の場合(40号公告)は、「金額の多寡を問わず、税務機関での審査不要」と規定されているのに対して、人民元の場合は、「40万元を超過する場合は、顧客に税務機関での備案表を要求する(但し、税務部門が備案証の取得を不要と規定している場合を除く)」という、解釈の相違が生じ得る表現となっています。
尚、注意を要する顧客とは、「人民銀行・その他の行政機関の管理制限リストや、クロスボーダー人民元重点管理リストに掲載されている企業」、「匯発[2020]14号のB,C類企業(貨物代金決済の懲罰対応を受けている企業)、「設立、若しくは、正常経営から1年未満の企業」、「1年以内に罰則を受けた企業」などが該当します。
水野コンサルタンシーグループ代表 水野真澄