受取配当金課税猶予適用範囲拡大 執筆日:2018年11月3日

2020-05-31

受取配当金課税猶予適用範囲拡大 ****

2018 年 9 月 29 日に、財政部・国家税務総局・国家発展改革委員会・商務部より「外国投資者が分配利益により直接投資する場合の暫定的な租税繰り延べ政策の適用範囲拡大に関する通知(財税[2018]102 号)」が公布され、2018 年 1 月 1 日に遡って施行されています。

これは、国外出資者が、出資先の外資企業から受領する配当を原資として、中国に再投資を行う場合、配当に関する源泉徴収課税(企業所得税課税)を、暫定的に繰り延べる優遇措置ですが、その内容を解説します。

1.優遇措置の経緯

配当を原資とした再投資に関する課税繰り延べ措置が、2017 年に公布された「国外投資者が利益分配により直接投資する場合の所得税暫定非課税措置政策問題に関する通知(財税[2017]88 号)」により認められました。

但し、この優遇措置の対象企業は、奨励分類外資企業・中西部地域外商投資優勢産業目録該当企業に限定されていました。

これが、全ての外資企業に、適用範囲が拡大されたものです。

尚、当該優遇措置(全外資企業を対象とした課税繰り延べ措置)は、2018 年 1 月 1 日に遡及して実施されますので、外国出資者が、同日(当日を含む)以降に取得した配当により、条件に合致する再投資を行った場合は、適用が認められます。

2. 優遇の内容

中国内の外資企業等に出資する外国出資者が、受領する配当を以て、増資・新規設立・持分買収等を行った場合、配当に伴う企業所得税課税の暫定猶予が認められます。

① 適用条件

優遇措置を享受するためには、以下の全ての条件を満たす必要が有ります。

1)外国出資者が受取配当金によって行う以下の行為であること(但し、上場企業の株式取得等は含まない)。

・ 中国居住者企業の資本金、資本準備金の増加、無償増資

・ 中国居住者企業への新規出資

・ 非関連者からの中国居住者企業の持分取得

・ 財政部、国家税務総局が規定するその他の場合

2)配当の対象となる利益は、企業の内部留保(剰余金)から支払うものであること。

3)優遇措置の適用を受ける場合、関連代金は、利益配当を行う企業の口座から、当該被投資企業(増資等の場合)、持分譲渡企業(買収の場合)に支払うこと。

以上の通り、外資企業が、いったん配当を決議する必要があり、それを国外出資者に送金するのではなく、国外出資者が予定している、中国内の投資、持分購入代金の支払いとして、直接当事者に支払うことが、優遇措置適用の条件となります。

また、現物出資(現物・有価証券など)も認められますが、この場合、関連資産の所有権を、利益配当企業から、投資先の企業、若しくは、持分譲渡者に直接移転する必要があります。

② 優遇措置

上記 ① の条件に合致する場合、配当に際して必要となる 10%の企業所得税は、暫定的に課税が猶予されます。

課税猶予を受けた企業所得税は、外国出資者が、当該企業を持分譲渡・清算等の形で閉鎖・譲渡した段階で、対価(清算配当金・持分譲渡代金等)の回収より 7 日以内に申告納付する必要が有ります。

つまり、配当に関わる企業所得税の課税が、永久に免除される訳ではなく、当該配当企業が清算された段階、若しくは、他企業に売却された段階で、納税を行う必要が有ります。

尚、当該配当企業が清算・持分譲渡された場合でも、特殊性税務処理の条件に該当する組織再編の場合(一定要件を満たすグループ内組織再編)は、当該優遇措置の継続が認められます。