個人所得税法の外国税額控除

2021-04-07

個人所得税法には、外国税額控除の適用が規定されていますが、これは実務上、本当に受けられるのでしょうか。

1.個人所得税法の規定

個人所得税法、及び、同法実施条例には、以下の通り、外国税額控除が認められています。

● 個人所得税法第 7 条

居住者個人が、中国国外から取得した所得は、その未納税額から、国外で納付済みの個人所得税税額と控除・免除することができるが、控除・免除額は、当該納税者の国外所得に対して、本法の定めに従って計算した未納税額を越えてはならない。

● 個人所得税法実施条例

1)第 21 条

個人所得税法第 7 条にいう、国外において既に納付した個人所得税額とは、居住者個人が中国国外を源泉として取得した所得について、当該所得の源泉国(地区)の法令に従って納付すべき、かつ実際に納付した所得税額のことを指す。

国務院の財政、税務主管部門に別途規定がある場合を除き、中国国外の 1 つの国(地区)を源泉として取得した総合所得の控除限度額、経営所得の控除限度額、及びその他所得の控除限度額の合計値は、当該国(地区)を源泉とした所得の控除額である。

居住者個人が中国国内の 1 つの国(地区)において実際に納付した個人所得税額が、前項の規定に従って計算した、当該国(地区)を源泉とした収入の控除限度額を下回る場合、中国で差額部分の税金を納付しなければならない。当該国(地区)を源泉とした所得の控除限度額を超える場合、その超過部分について、当該納税年度の課税額の中で控除してはならないが、以降の納税年度の当該国(地区)を源泉とした所得の控除限度額の残高の中で繰越控除することができる。繰越控除期限は最長 5 年間を越えない。

2)第 22 条

居住者個人が、国外において納付した個人所得税額の控除を申請する際、国外税務機関の発行した税金所得年度の関連納税証憑を提供しなければならない。

2.外国税額控除の適用可否

個人所得税法には、以前から外国税額控除の規定が有りましたが、以前は、適用事例は極めて困難でした。2019 年に、上海市・天津市の税務局にヒアリングした結果では、双方、(質問した担当者の)知る限りでは実例が無いという回答でした。

ただ、個人所得税法改定に伴い、確定申告制度が変わるので、今後、可能になるかもしれないとのコメントが、(2019 年に)有ったため、それを踏まえ、近況を上海市税務局にヒアリングしたところ、適用可能との回答となりました。

ただ、適用が認められるのは、中国公民のみという回答でしたが、そのロジックは、以下の通りです。

個人所得税法第 7 条には、外国税額控除は、「居住者個人」が適用を受けられると規定されています。居住者個人とは、「中国公民(個人所得税法の記載は、中国において住所がある個人)、若しくは、課税年度に 183 日以上中国に滞在する外国人」となります。

中国公民は、中国滞在日数に拘らず、全世界所得に対して課税されるため、国外で課税されると、二重課税が生じるため、これを解消するために、外税控除の適用が認められます。一方、外国人は、年間 183 日以上滞在で居住者、未満であれば非居住者となりますが、連続滞在 6 年未満の外国人は、国外源泉所得に対しては課税されません。また、6 年の起算は 2019 年 1 月 1 日から開始するため(財政部・税務総局 2019 年第 34 号)、現在では、全ての外国人が、中国国内源泉所得課税の対象者です。

以上の結果、外国人は、国外源泉所得に対しては、課税されていないので、二重課税は生じておらず、外国税額控除も適用できないという理屈です(実際には、生じる事例は有るのですが)。 尚、満 6 年に達した後は、外国人でも全世界所得課税対象になりますが、達した年度(若しくは、その後)に、年間 30 日超の出国をすれば、満 6 年の実績はリセットされて、再度、国内源泉所得対象者となります。