設備の無償輸入 執筆日:2019年3月16日

2020-05-30

設備の無償輸入

貨物を無償で輸入したいという希望は、実務上、少なくありませんが、中国では、実務対応が難しい状況です。設備の無償輸入の可否と注意点に付いて解説します。

加工貿易に伴う無償提供設備(中国語:不作価設備)は、法律に基づき無償輸入・保税輸入(関税免除ベースでの輸入)が認められますが、その他の設備に関しては、無償輸入の正式な制度は有りません。よって、輸入時に、適正価額に基づいて、関税・増値税を納付する必要が有ります。

ただ、(適正価格に基づき)輸入段階課税を受けても良いので、無償輸入したいという希望も少なく有りませんが、これは可能でしょうか。

税関輸出入管理体系には、「その他無償輸出入(税関管理番号:3339)」という項目があり、以下の様な取引形態を処理します。

① 国際貿易において外国企業が中国企業に寄贈する物品

② 外国人からの寄贈品

③ 中国企業(内資企業)の国外機構が、国内の総公司(中国企業)に寄贈する物品

④ 国際貿易において、外国企業が提供する試験車用材料、消耗性物品

外国企業(日本企業等)が、中国企業に設備を無償提供する場合は、上記 ① に該当するため、理論上は、税関に、この管理番号で輸入申請する事はできますが、受理されるかは、税関の判断次第であり、明確な基準はありません。

ただ、実務運用を見てみると、この方式での輸入通関は困難であり、特に、高額な場合は、まず認められません。では、高額とは、どの程度の金額を指すかという点ですが、これも明確な基準がなく、判断が難しいのですが、一応、10 万元というのが、一つの目安と考えられています。

10 万元の根拠は、「税関輸出入貨物課税価格査定弁法(税関総署令 2013 年第 213 号)」・第 48 条に、以下の規定がある事です。

● 以下形態内の一つに合致する場合、納税義務者の紙面による申請を経て、税関は価格質疑及び価格の意見交換を行なわず、本弁法第 6 条、或いは第 45 条に列記される方法で輸出入貨物の課税価格を審査し、確定できる。
(二) 輸出入貨物の課税価格が人民元 10 万元以下、或いは関税及びその輸入段階税関代

理徴収税の総額が人民元 2 万元以下のもの。

ここでいう、第 6 条・第 45 条に記載する方法とは、取引価格が時価とは異なる場合、同一商品、類似商品の輸入通関価格などをもとに、関税評価額を査定する事を指します。

つまり、10 万元以内であれば、税関からの質問を受けずに、適正評価額の算定ができるので、対応がしやすい(逆に、それを超えると、無償取引の合理性にまで、税関の判断を仰ぐ必要が生じる)というのが、この金額の根拠です。

但し、この 10 万元というのは、飽くまでも関税評価額の査定ステップの違いであり、無償輸入を認める根拠では有りません。よって、10 万元以内でも、輸入通関が認められない場合もありますし、その逆も有ります。

総じていうと、無償輸入は、税関の同意が得られにくいのは上述の通りです。

尚、実務では、税関には、一般貿易として申告し、代金を支払わないというケースも見られます。この場合、現在の、貨物代金決済制度(匯発[2012]38 号)では、通関データと決済データの乖離が大きいと、外貨管理局の立ち入り検査を受け、外貨ランクが降格するリスクがあります。よって、この意味でも、高額の場合は、対応しにくいと言えます。