【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.56(2021年10月20日発行)

2021-10-31

【水野コンサルタンシー中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版 Vol.56 (2021 年 10 月 20 日発行)

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【中越ビジネスマニュアル 第 56 回】

ベトナムの個人所得税について

ベトナムの個人所得税について解説します。

1.個人所得税の概要

ベトナム源泉の所得を得る個人は、ベトナムで個人所得税を納付する義務があります。

個人所得税の納税義務・納付方法は、居住者・非居住者の区分、課税対象所得の内容、給与の支払地(ベトナム国内か否か)、個人所得税の月次発生額によっても異なるため、その概要を解説します。

<1> ベトナム居住者・非居住者の区分(政令・第 65/2013/ND-CP 号・第2条)

居住者とは、以下に該当する個人を指します(財務省通達・第 111/2013/TT-BTC 号・第1条)。

  • 暦年、もしくは、ベトナムへの初めての入国日から 12 カ月間以内に 183 日以上ベトナムに滞在する個人

  • ベトナム居住法に基づく恒久的居住地に関する登記を有する個人

  • レジデンスカードを有する者

  • ベトナム住居法に基づく住居用の賃貸借契約を課税年度において 183 日以上締結している個人

ただし、課税年度におけるベトナムでの滞在日数が 183 日未満であり、他国の税務当局が発行した居住者証明書等で、他国の居住者であることを証明できる場合は除外されます。なお、非居住者とは、上記の居住者以外を指します。

<2> 課税範囲

居住者は、全世界所得に対して申告する義務があります。一方、非居住者は、ベトナム源泉の所得のみが課税対象となります。

なお、所得源泉は、支払い場所ではなく、その所得の根拠・原因がどこから発生したかに基づいて判定されます。よって、ベトナムで発生したと看做される所得は、ベトナム国外で受領しても課税対象となります。例えば、出張者が日本から商用でベトナムを訪問する場合などは、日本でのみ給与支給が発生しますが、出張に対する対価としてベトナム国外で支給された給与・手当もベトナム源泉の所得となり得ます。

また、しばしば、183 日未満のベトナム滞在であるという理由で税務申告を行わない出張者を見受けますが、ベトナムの制度上、商用で1日でも滞在すれば、本来、非居住者としての税務申告義務が生じますので注意が必要です。

ただし、日越租税(所得)協定に基づく日本居住者の場合で、年間 183 日を越えない滞在は、ベトナム国内の組織・機構が賃金給与の支払い、および、負担をしない限り、事前申請を前提にベトナムでの課税は免除されます。

<3> 課税対象所得

個人所得税の課税対象となるのは、下記内容により取得する所得となります(政令・第 65/2013/ND-CP 号・第3条)。

  • 生産・事業活動、給与・賃金、資本投資、資本譲渡、不動産譲渡、賞金、商標権、商業フランチャイジング、相続、贈与
<4> 非課税対象

課税対象所得のうち、下記に該当する場合は非課税となります(政令・第 12/2015/ND-CP 号・第2条、政令・第 65/2013/ND-CP 号・第4条)。

  • 生産・事業活動からの所得であるが、年間1億ドン以下の場合

  • 不動産譲渡からの所得であるが、配偶者・両親・子・養父母・養子・子の配偶者・祖父母・孫・兄弟間の場合

  • 居住用家屋・土地使用権・土地付加物の譲渡からの所得であるが、ベトナム国内に一つの居住用家屋・土地使用権しか有していない場合

  • 不動産に関する相続・贈与であり、配偶者・両親・子・養父母・養子・子の配偶者・祖父母・孫・兄弟間の場合

  • 未加工の農林水産物の生産・収穫に従事する個人の所得

  • 銀行預金・生命保険契約からの利息

  • 夜勤・残業の対価として支払われる給与・賃金のうち、日勤・勤務時間の対価として支払われる給与・賃金を上回る部分

また、外国人就労者に関する規定も別途定められており、雇用者が支払ったベトナムで就労する外国人に対する、年に一度の帰省時における往復航空運賃・ベトナムにおける子供の教育費等は非課税対象となります。

なお、雇用者が支払った被雇用者の家賃は課税対象ですが、家賃を除く課税所得の 15%を超過する部分は非課税対象となります(財務省通達・第 111/2013/TT-BTC 号・第2条)。

2.個人所得税の税率

<1> ベトナム居住者に対する税率

課税対象内容に応じ、下記の税率が適用されます(個人所得税法・第 04/2007/QH12 号、政令・第 65/2013/ND-CP 号、財務省通達・第 92/2015/TT-BTC 号)。

1)生産・事業活動:物品販売 0.5%、製造・輸送 1.5%、建設2%、リースおよび宝くじ・保険・マーケティング代理5%、その他1%
2)給与・賃金:5%~ 35%の超過累進税率
3)資本投資:利益の5%
4)資本譲渡:出資金譲渡益の 20%
5)不動産譲渡:譲渡額の2%
6)賞金・相続・贈与:1,000 万ドン超過額の 10%
7)商標権・商業フランチャイジング:1,000 万ドン超過額の5%
<2> ベトナム非居住者に対する税率
1)生産・事業活動:物品販売1%、サービス5%、製造・輸送・建設・その他2%
2)給与・賃金:20%の固定税率
3)資本投資:利益の5%
4)資本譲渡:出資金譲渡額の 0.1%
5)不動産譲渡:譲渡額の2%
6)賞金・相続・贈与:1,000 万ドン超過額の 10%
7)商標権・商業フランチャイジング:1,000 万ドン超過額の5%

3.ベトナム居住者への所得控除

外国人・ベトナム人ともに、月額 900 万ドンの基礎控除が認められており、被扶養者一人当たり 360 万ドンの扶養控除も認められています(個人所得税法の一部条項にかかわる改正法・第 26/2012/QH13 号・第1条)。

2020 年7月1日から、基礎控除は 1,100 万ドン、扶養控除は 440 万ドンに引き上げられ、2020 年の全課税期間に適用されますので(国会常任委員会決議・第 954/2020/UBTVQH14 号)、旧法に基づき申告した 2020 年1月から6月分は、確定申告時に調整となります。

扶養控除対象については、被扶養者の年齢が労働年齢に該当する場合、原則として扶養控除は認められません。現在の労働年齢は、男性が 18 歳から 60 歳、女性が 18 歳から 55 歳ですが(労働法・第 10/2012/QH13 号・第 187 条)、2021 年からの上限は、男性が 60 歳3カ月、女性が 55 歳4カ月となり、翌年以降も、男性は 2028 年まで毎年3カ月ずつ引き上げられ最終的には 62 歳が上限となります。女性は 2035 年まで毎年4カ月ずつ引き上げられ、最終的には 60 歳が上限となります(改正労働法・第 45/2019/QH14 号・第 169 条)。源泉徴収される強制保険も控除対象となりますので、日本で源泉徴収されている厚生年金、健康保険、雇用保険もその対象です(個人所得税法・第 04/2007/QH12 号・第 21 条)。

なお、ベトナム非居住者には、上記の所得控除制度はありません。

4.申告・納付

<1> 月次・四半期申告

課税所得を支払う者(雇用者)、および、課税所得を受取る者(被雇用者)は納税義務者となります(財務省通達・第 156/2013/TT-BTC 号・第 16 条)。

雇用者は、給与支給に際して個人所得税を源泉徴収した場合、もしくは、源泉徴収の有無に関わらず、被雇用者からの委任がある場合、申告・納付を行います。

被雇用者がベトナム国外で支払われた給与所得を有する場合、被雇用者自身が申告・納付する必要があります。

雇用者・被雇用者いずれの申告・納付も原則として、各四半期翌月の 30 日が期日となりますが、1カ月当たり 5,000 万ドン以上の個人所得税が発生する場合、雇用者には月次申告が求められており、期日は翌月 20 日となります。ただし、付加価値税(VAT)申告を各四半期で行う雇用者の場合、個人所得税申告も各四半期での申告となります。

<2> 確定申告

確定申告は、原則として、暦年末日から 90 日以内に行う必要があります。ただし、暦年では居住者でないが、ベトナムへの初めての入国日から 12 カ月間に 183 日以上ベトナムに滞在する場合、最初の課税年度は、入国日から1年間となります。例えば、2020 年 10 月1日に入国した場合の課税年度は、2020 年 10 月1日から 2021 年9月 30 日となりますので、まず、この期間の確定申告が必要です。その後、さらに 2021 年1月1日から 12 月 31 日までの確定申告も暦年で行わなければなりません。2021 年1月1日から9月 30 日までの申告は重複しますので、暦年での申告に際して控除します。

なお、非居住者に確定申告は求められていません。

<3> 申告期日の変更

改正租税管理法・第 38/2019/QH14 号が 2020 年7月1日に施行され、申告期日が一部変更されています。

  • 月次申告:翌月 20 日にて変更はありません。

  • 四半期申告:四半期翌月の 30 日 → 四半期翌月の末日

  • 確定申告(源泉徴収した法人による場合):暦年末日から 90 日 → 暦年末日から3カ月目の末日

  • 確定申告(ベトナム国外給与所得を有する個人による場合):暦年末日から 90 日 → 暦年末日から4カ月目の末日

以上


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