【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.82

2023-03-01

【中越ビジネスマニュアル 第 82 回】

中国・ベトナムにおける外資企業の借入制限について

■ 1.中国

(1)中国内借入

中国内の銀行から借入を行う場合、内資・外資銀行を問わず、また通貨を問わず外貨債務登記などの手続きは不要であり、総量制限は受けません。

ただし、親会社の保証付き借入の場合、借り入れる段階では総量規制は行われませんが、返済不能になり、親会社が保証履行する場合は偶発債務登記が必要となり、その金額は国外借入(2)と同様の総量規制の対象となります。

(2)国外借入

国外からの借入は、外貨管理局での外債登記は必要となり、一定の総量規制を受けます。総量枠は、投注差方式(国家発展計画委員会・財政部・国家外貨管理局令[2003]第 28 号、銀発[2012]165 号)、もしくは、マクロプルーデンス方式(銀発[2017]9号)のいずれか1種類を選択して、継続適用することになります。

投注差方式とは、借入枠を定款に記載された総投資金額と資本金の差額に制限する方式。一方、マクロプルーデンス方式とは、2016 年から開始された方法ですが、一定の調整を加えた借入金額を、前年度の会計監査報告書に記載された自己資本の2倍(この金額は随時修正されます)以内に制限する方法です。

なお、投注差方式の場合は、総投資と資本金の間に一定の比率(工商企字[1987]第 38 号による総投資と資本金の比率)が要求されることや、短期外貨建て外債以外(中長期外貨建て外債および全ての期間の人民元外債)は、返済しても借入枠が復活しないため、通常企業であれば、マクロプルーデンス方式の方が有利です。ただし、債務超過状態の企業は、マクロプルーデンス方式では借入枠がなくなるため、増資をしない限りは、投注差方式の適用を余儀なくされます。

(3)中国内融資の原則

「貸付通則(人民銀行令 1996 年第2号)」・第 21 条では、中国内の非金融企業間の直接融資を禁止しています。このため、中国内の一般企業(非金融企業)が融資を行うことは、通貨を問わず(外貨・人民元双方)認められません。

中国の非金融企業が実質的な貸付を行う場合、委託貸付という、銀行を仲介した間接融資制度を採用します。この制度を使えば、実質的な企業間融資が可能となります。

■ 2.ベトナム

(1)ベトナム内借入

ベトナム内の銀行から借入を行う場合、契約期間が1年超となる中長期借入金に対しては総量規制が適用されますので、企業の借入枠は投資登記証に記載された「投資総額と資本金との差額」に制限されます(投注差方式)。ただし、中央銀行への登録は必要ありません。また、契約期間1年以下の短期借入金に関しては、投注差方式による制限はありません。

(2)国外借入

国外からの借入に関しても、契約期間が1年超となる中長期借入金に関しては、投注差方式が適用されます。ただし、国内借入とは異なり、国外からの中長期借入金は、中央銀行への登録が必要ですので、契約締結日から 30 日以内かつ資本口座への入金前に登録を行います。

(3)ベトナム内融資の原則

ベトナム企業は登記された事業内容以外の活動は行えませんので、ベトナム内の一般企業(非金融企業)の融資行為は、通貨を問わず(外貨・ベトナムドン双方)認められません。


中国・ベトナムにおける外国企業の不動産購入について

外国企業・外国人の中国・ベトナム内の不動産購入の可否を解説します。

■ 1.中国

(1)外国企業・外国人の不動産購入制限

中国では 2006 年より、外国企業・外国人の不動産購入が原則として禁止されました(建住房[2006]171 号・匯発[2006]47 号・建房[2010]186 号)。

ただし、以下の場合は例外的に購入が認められます。

● 外国企業が中国内に開設した分枝・代表機構(分公司・常駐代表所・事業所)および中国内で1年を超過する期間就業・就学をする外国人は、自己使用目的の不動産に限定して購入が認められる。

● 購入できる不動産は自己使用目的に限定され、外国企業の場合はオフィスのみ(住居は不可)、個人の場合は1戸に限り購入が認められる。

上記の通り、中国内に分枝機構を持つ外国企業のみが、自社のオフィスとして使用するための不動産を購入することができます。

また、個人が購入する住宅については、「不動産市場における外資参入および管理関連政策の調整に関する通達(建房[2015]122 号)」で、戸数制限が削除されていますが、各地の運用状況を見ると、当該通達公布以前と同様の管理が行われています。

ちなみに、上記の通知が施行される前に外国企業が購入した不動産は、現時点では継続保有が認められています。

(2)不動産購入に伴う外貨管理

不動産購入資金の換金(外貨から人民元換金)は、以下の通り定められています。

1)外国企業の分枝・代表機構の不動産購入

購入代金を外国から送金する場合は、人民元換金に際して、以下の書類を銀行に提示し、審査を受ける必要があります。

● 提出書類

不動産売買契約書、中国内の分枝・代表機構の登記証明、不動産主管部門が発行する分枝・代表機構の販売予約証明、購入物件が自家用に適していることに関する書面確認。

2)就業・就学が1年以上となる個人の不動産購入

銀行審査に当たり必要となる書類は、以下の通りです。

● 提出書類

不動産売買契約書、パスポート等の身分証明書、1年以上の就業・就学を証明する雇用契約書もしくは在学証明書、不動産管理部門が発行した当該不動産の販売予約証明等。

■ 2.ベトナム

(1)外国企業・外国人の不動産購入制限

15 年7月1日に施行された改正住宅法・第 65/2014/QH13 号により、外国組織・外国人による不動産購入条件は緩和されており、以下の場合は購入が認められます。

● 外国企業がベトナム内に開設した分枝・代表機構(外国投資企業・支店・駐在員事務所)は、自己使用目的の不動産に限定して購入が認められる。外国人は居住用目的のみでなく、賃貸目的の購入も認められる。

● 外国企業が購入できる不動産は自己使用目的に限定されるが、オフィス使用目的のみでなく、従業員の居住用目的での購入も認められる。

住宅法改正前は、外国企業(不動産業を除く)に関しては、ベトナムに設立された外資企業(外国投資企業)が従業員の居住用の不動産を取得することのみ認められていましたが、改正後は、外国企業の支店・駐在員事務所も取得が可能となっており、利用目的も従業員の居住用に加え、オフィス利用目的での取得も可能となっています。また、外国人に関しては、改正前は認められていなかったベトナム非居住者の不動産取得も認められています。ただし、居住用不動産に関しては、外国企業・外国人の取得に関する総量規制があり、集合住宅の場合は、外国企業・外国人が取得できる上限は 30%までとなっています。また、戸建て住宅の場合、市の下部組織に坊(Phuong)という行政単位がありますので、坊と同水準の居住者数を有する地域において 250 戸が上限となります。さらに、外国企業・外国人が購入できる不動産自体が限定されており、全ての不動産が対象ではありません。

(2)不動産購入に伴う外貨管理

不動産購入資金の送金は、以下の通り定められています。

1)外国企業の分枝・代表機構の不動産購入

ベトナム国内送金は、ベトナムドンのみが認められます。銀行に以下の書類を提示して、送金手続きを行います。

● 提出書類

不動産売買契約書、投資登記証明書等のベトナム国内ライセンス、出資者総会決議書(有限会社の総資産の 50%以上の価額の場合)、取締役会決議書(株式会社の総資産の 35%以上の価額の場合)。

2)個人の不動産購入

ベトナムドンの国内送金に当たり必要となる書類は、以下の通りです。

● 提出書類

不動産売買契約書、パスポート等の身分証明書、入国許可を証明するビザ等。

以上