【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.87

2023-08-14

【中越ビジネスマニュアル 第 87 回】

中国・ベトナムにおける法人税(企業所得税)について

中国とベトナムの法人税について解説します。

■ 1.中国

企業所得税法(主席令 2007 年第 63 号)の概要は以下の通りです。

(1)税率

25%の固定税率が採用されています。ただし、中国内にPEの無い非居住者(源泉徴収課税が適用される)に対しては 10%の税率が適用されます。

(2)優遇税率の適用

企業所得税法では、ハイテク企業は 15%、小規模で利益が少ない企業は 20%の税率適用が認められています(税法第 28 条)。
年間課税所得額 300 万元以内の小規模薄利企業に対して、2027 年末までの期間、実質 5%の企業所得税率適用(課税所得を 25%に減額した上で、20%の税率を適用)が認められます。
注:根拠となる財政部・税務総局公告 2022 年第 13 号では、優遇対象となるのは、2024 ~ 2027 年に付いては 100 万元以下の部分のみとも読み取れますが、上海市税務局でのヒアリングでは、300 万元以下の部分に付き適用可能との回答でしたので、この前提で解説しています。

この優遇を受ける事ができる小規模薄利企業は、国家が制限・禁止する業種ではなく、且つ、「年度の課税所得が 300 万元以下、社員 300 人以下、資産総額 5,000 万元」の 3 条件を、全て満たす企業と規定されています。
従業員数は、企業が労働契約を締結した社員に加え、受け入れた派遣人員を含みます。

(3)中国内で受け取る配当

税法第 26 条により、条件に合致する配当(内国企業がその他の内国企業に直接投資して取得する投資収益)は免税となっています。

(4)損失の繰り越し

税務上の損失は、5年間の繰り越しが認められます(税法第 18 条)。

(5)予納・確定申告

企業所得税法では、月次もしくは四半期毎の予定納付(翌月 15 日以内)が義務付けられています(税法第 54 条)が、通常四半期となります。また、年度終了後5カ月以内に確定申告を行う必要があります。

■ 2.ベトナム

企業所得税法(第 14/2008/QH12 号)の概要は以下の通りです。

(1)税率

20%の固定税率が採用されています。ただし、ベトナムで事業を行うもしくはベトナムから所得を得る外国企業(ベトナム内にPEを有するか否かは問わない)に対しては、その提供するサービスや販売の内容に応じて 0.1%から 10%までの税率が適用され源泉徴収されます。例えば、親子ローンの利息には5%、オンザスポット輸出入(契約上のモノの流れはベトナム → 外国 → ベトナムだが、実際のモノの流れはベトナム → ベトナム)の場合、外国企業の販売価額に対して1%です。

(2)優遇税率の適用

財務省通達・第 78/2014/TT-BTC 号では、投資する事業内容・地域に応じて、優遇税率 10%、17%、優遇期間 10 年、15 年、30 年、全期間への適用が認められています(第 19 条)。

1)優遇税率:10%・優遇期間:15 年

社会・経済的に特に困難な地域、経済区、ハイテク区での事業、科学研究等

2)優遇税率:10%・優遇期間:30 年

上記1)の事業のうち、大規模・ハイテク分野にて特別な投資誘致が必要な首相決定案件等。

3)優遇税率:10%・優遇期間:全期間

教育、訓練、職業訓練、医療、文化、スポーツ、出版、農林水産業等。

4)優遇税率:17%・優遇期間:10 年

社会的・経済的に困難な地域での事業、高品質鋼の生産、省エネルギー製品等。

5)優遇税率:17%・優遇期間:全期間

人民クレジットファンド、銀行協同組合、マイクロファイナンス

(3)損失の繰り越し

税務上の損失は、5年間の繰り越しが認められます(企業所得税法・第 16 条)。

(4)予納・確定申告

政令・第 91/2014/ND-CP 号では、四半期毎の予定納付(翌月 30 日以内)が義務付けられています(第4条)。また、年度終了後3カ月以内に確定申告を行う必要があります。


中国・ベトナムにおける流通税について

中国とベトナムの流通税について解説します。

■ 1.中国

中国の流通税は、以下の通り増値税と消費税となります。

(1)増値税

現在、増値税法が審議されていますが、現時点での根拠は以下の通りです。

増値税はインボイス方式(発票と呼称される税務領収書を使用)が採用されており、この発票は仕入控除・輸出還付の根拠となるだけでなく、あらゆる会計処理の基礎となる重要な証憑と位置付けられています。

1)財貨の増値税

「増値税暫定条例」を根拠規定とします。納税人は一般納税人と小規模納税人に分かれ、後者は3%と低い税率ですが、仕入控除・輸出還付が認められないため、相対的に不利となります。

● 基本税率:13%…財貨の販売、加工補修役務

● 特定物品:9%…食糧、食用植物油、水道水、その他

● 小規模納税人の税率:3%

2)役務の増値税

元々は営業税の課税対象であったものが増値税に転換されたものであり、財税[2016]36 号が根拠となります。

● 基本税率:6%

● 有形動産リース:13%

● 交通運輸、郵便、基礎電信、建築、不動産リース、不動産販売、土地使用権譲渡:9%

● 小規模納税人の税率:3%(不動産は5%)

(2)消費税

「消費税暫定条例」を根拠とし、たばこ・アルコール・化粧品などの特定物品を課税対象とします。課税は原則として、生産者からの出荷時もしくは輸入時となります。

(3)その他

過去には内資企業のみを課税対象としていましたが、2010 年 12 月1日より、外国企業・外資企業にも課税されるようになりました。流通税に対して課税される付加税(城市建設税・教育費付加等)で、地域によって税率・課税方式が異なるものの、おおむね流通税額の 10%程度が課税されます。

■ 2.ベトナム

ベトナムの流通税は、付加価値税と特別消費税となります。そのうち、特別消費税は特定物品・サービスのみに課税される奢侈(しゃし)税です。なお、ベトナムの流通税は国税のみです。

(1)付加価値税

1)付加価値税の概要

付加価値税は、物品売買、役務提供、金融サービスなど、全ての商行為を課税対象としていますが、中国と異なり、技術・知的財産の移転、コンピューターソフトウエアなどの無形資産売買は非課税となっています。また、付加価値税と営業税という区分は無く、財貨と役務による区分もありません。付加価値税の基本税率は 10%であり、0%、5%の軽減税率対象が定められていますので、非課税・軽減税率対象以外の物品・サービスに対しては、10%の基本税率が適用されます。

2)税率

● 0%軽減税率対象…輸出する物品および国際輸送。輸出する非課税対象物品およびサービス。ただし、以下の物品・サービスは除く:技術・知的財産の国外移転、国外の再保険、金融サービス、資本譲渡、通信・郵便、未加工の輸出資源・鉱物。

● 5%軽減税率対象…製造・生活用水、肥料、肥料用鉱石、動植物用殺虫剤・成長促進剤、牛・家畜等飼料、農業用水路・溜池等の造成、作付け・害虫駆除、農産品の半加工・保管、半加工のゴム・樹脂、漁網用の網・縄・繊維、生鮮食品、製糖、黄麻・竹・スゲ・籐・ヤシ・ウォーターヒヤシンス製品、農産手芸品、半加工綿、新聞印刷用紙、農業用機械・設備、医療用機器、医療用ガーゼ・包帯、予防・治療薬、医薬品・原材料、黒板・チョーク・定規・コンパス等の教材・学習道具、教育・研究・科学実験に用いられる器具、文化活動、展示、体育・スポーツ活動、芸術活動、映画製作、映画輸入・配給、子供用ゲーム、書籍(新聞、学術書等を除く)、科学技術サービス、文化住宅の販売・リース・割賦販売。

●10%基本税率対象…0%・5%軽減税率対象以外の物品・サービス。

コロナ禍における企業支援策として、22 年2月~ 12 月は2%減税され、8%税率が適用されます。ただし、通信、IT、金融、保険、証券、不動産、鉱業(石炭採掘を除く)、石油、化学、特別消費税対象となる商品・サービスは対象外です。

(2)特別消費税

特別消費税はたばこ、酒、貴金属、24 席以下の自動車、ガソリン、トランプ、ディスコ、マッサージ、カラオケ、カジノ、ゴルフ場、宝くじなど、特定の奢侈品・サービスに対して課税される奢侈税で、原則として「製造・輸入・サービス提供段階」で課税されます。

以上