【Mizuno-CH中国・ベトナムビジネス情報】ダイジェスト版Vol.91

2023-12-18

【中越ビジネスマニュアル 第 91 回】

中国・ベトナムにおける個人情報保護について

■1.中国

(1)データ保護の概要

中国では、「サイバーセキュリティー法(2017年6月1日施行)」、「データセキュリティー法(21年9月1日施行)」、「個人情報保護法(21年11月1日施行)」により、ネット環境の安全性や個人情報・重要データの保護が図られています。

サイバーセキュリティー法・データセキュリティー法は、重要性のある全データやネット環境全般を包括したものです。個人情報保護法は、個人情報保護を専門に規定しています。

(2)個人情報保護法

個人情報保護法は、中国域内自然人の個人情報保護を目的とした法律であり、中国域内で個人情報の取り扱い(個人情報の収集、保管、使用、加工、送信、提供、開示、削除等の活動)に従事する組織を規制対象としています。

個人情報の取り扱いは、「個人の同意取得」が義務付けられています(第13条)。ただし、「個人が一方の当事者となっている契約を締結、履行するために必要な場合」、「法律に基づいて作成された労働規則制度および団体契約に従って、人的資源の管理を行う必要がある場合」、その他、公共の必要性に基づく場合などは同意取得が免除されます。

また、生体情報、宗教信仰、特定の身分、医療健康、金融口座、移動履歴などの情報および14歳未満の未成年者の個人情報(第28条)など、漏えいや不正により、深刻な影響が想定される個人情報に対しては、敏感性個人情報として、一層の保護が織り込まれています。

(3)域外への個人情報提供

個人情報取扱者が域外に個人情報を提供する必要がある場合、一定の手続きが必要となります。この手続きは、取扱者の重要性と扱うデータ量によって、「国家サイバー情報部門のセキュリティー評価に合格。国家サイバー情報部門の規定に基づき、専門機関の個人情報保護認証を取得(双方、重要性が高い場合)」と、「国家サイバー情報部門が定めた標準契約書に基づき契約し、それを備案(届け出)すること(重要性が低い場合)」となります(第38条)。

このうち、重要性が低い場合に適用される標準契約書は、「個人情報出境標準契約弁法(国家互聯網情報弁公室令第13号)」で公布(23年6月1日施行)。また、備案の具体的な方法は23年5月30日に、「個人情報出国標準契約備案指南(第一版)」として公開されています。

■2.ベトナム

(1)データ保護の概要

ベトナムでは、「サイバーセキュリティー法(19年1月1日施行)」、「個人情報保護政令(23年7月1日施行)」により、個人情報・重要データの保護が図られています。

サイバーセキュリティー法は、オンラインサービスを提供する事業者が対象となりますが、個人情報保護政令は、個人情報を処理する全ての事業者が対象となります。

(2)個人情報保護政令

個人情報保護政令は、個人情報保護を目的とした法律であり、個人情報の処理(個人情報の収集、記録、分析、保管、変更、開示、送信、提供、削除等の行為)に従事する組織・個人を規制対象としています。域外の組織・個人であっても、ベトナムにおける個人情報の処理に直接関与し、または関連を有する場合は規制対象となります。

個人情報の処理には、「個人の同意取得」、「個人への処理の通知」、「個人情報処理影響評価書の公安省担当部局への提出」が義務付けられています。

公共の必要性に基づく場合などは同意取得等は免除されますが、中国のように「人的資源の管理を行う場合」などの免除規定が無く、ほぼ全ての企業が対象となるため、どの程度厳格な運用がなされるかは不透明です。また、個人情報処理影響評価書の提出は、処理開始から60日以内と定められていますが、所定の書式が公表されたのが23年7月下旬であり(7月1日施行後)、その記載方法に関するガイダンスも出ておらず、提出用のポータルサイトは8月29日の期日直前に公開されたという状況です。

また、生体情報、宗教信仰、政治的傾向、医療健康、犯罪歴、金融口座、移動履歴など、漏えいや不正により、深刻な影響が想定される個人情報に対しては敏感性個人情報として、一層の保護が織り込まれています。

(3)域外への個人情報提供

ベトナム人の個人情報を域外に移転または域外で処理する場合、個人情報移転影響評価書を移転・処理から60日以内に公安省担当部局に提出するとともに、個人情報の移転担当部門・責任者を定めて公安省担当部局へ通知する必要があります。


中国・ベトナムにおける外資企業の国内拠点(再投資子会社)について

■1.中国

(1)国内持分出資の原則

投資性公司以外の外資企業、つまり営業許可に持分出資が含まれない外資企業(生産型企業、商業企業、サービス企業等)であっても、持分出資が可能です。

投資性公司以外の外資企業の国内持分出資根拠は、「外商投資企業の国内投資に関する暫定規定(対外貿易経済合作部・国家工商行政管理局令[2000]第6号)」であり、その後の規制緩和もあり、手続きは以下の通りとなっています。

<国内持分出資の手続き>

●被出資会社が非ネガティブリスト業種の場合は、被出資会社所管の市場監督局(旧工商行政管理局)で営業許可取得申請を行う。

●被出資会社がネガティブリスト業種の場合は、被出資会社所管の商務主管部門もしくは商務部で、規定に基づき許可取得手続きを行う。

(2)持分出資の制限

上記暫定規定には、持分出資を行う外資企業は「資本金が全額払い込みであること。利益を計上していること。違法歴が無いこと(第5条)」、さらには、出資金額は「自己資本の50%以内であること(第6条)」が要求されています。

ただ、この制限は「外商投資企業の審査・認可・登記管理の法律適用範囲に関する若干の問題についての執行意見を実施する事に関する通知(工商外企字[2006]第102号)」、「一部の規則及び規範性文書の改正に関する決定(商務部令2015年第2号)」により廃止されており、現在の制限は払い込み資金の来源のみとなっています。

投資性公司以外の外資企業の出資は、経常項目口座内の資金からの支払いに限定(資本金口座・借入金口座などの資本性口座からの払い込みは禁止)されていました。

現在は、外貨については「クロスボーダー貿易・投資の一層の利便化の促進に関する通知(匯発[2019]28号)」、人民元については「クロスボーダー人民元政策の一層の改善による貿易・外国投資の安定化指示に関する通知(銀発[2020]330号)」により、資本金口座内資金を国内持分出資に使用することが認められています。一方、借入金口座・外債口座内資金の使用は禁止されています。

■2.ベトナム

(1)国内持分出資の原則

外資企業(生産型企業、商業企業、サービス企業等)は、投資禁止分野や外資規制分野を除き、持分出資が可能です。外資企業の国内持分出資根拠は、「企業法・第59/2020/QH14号・第17条」であり、手続きは以下の通りとなっています(投資法・第61/2020/QH14号・第23条)。

<国内持分出資の手続き>

●被出資会社が以下のいずれかに該当する場合は、被出資会社所管の計画投資局で投資登記証明書取得申請、企業登記証明書取得申請の順に手続きを行う。

(1)外資企業(外国投資家が定款資本の50%超を保有)が定款資本の50%超を保有する会社。

(2)外国投資家と外資企業(外国投資家が定款資本の50%超を保有)が定款資本の50%超を保有する会社。

●被出資会社が上記会社に該当しない場合は、投資登記証明書取得申請は不要であるため、被出資会社所管の計画投資局で企業登記証明書取得手続きのみを行う。

(2)持分出資の制限

企業法・第17条第2項・3項には、企業設立の権利、企業への出資が認められない組織が定められていますが、当該規定に外国投資家と外資企業は含まれていません。

以上