中国における個人の外貨管理 執筆日:2022年3月29日

2022-03-29

執筆日:2022 年 3 月 29 日

中国における個人の外貨管理

個人の外貨管理の概要を、「経常項目外為業務ガイド(匯発[2020]14 号)」に基づいて解説します。

1.外貨と人民元の換金

①  外貨から人民元への換金(第 54 条)

個人(中国公民・外国人双方)は、身分証を提示すれば、年間累計 US$5 万の範囲内で、外貨から人民元に換金できます。

尚、近親者に対して、この自由換金(人民元転、外貨転)を委託することが認められます。

近親者とは、配偶者、父母、兄弟姉妹、祖父母、外祖父母、孫、外孫を指します(第 61 条)。

②  人民元から外貨への換金

1)換金

中国公民は、年間累計 US$ 5 万以内であれば、銀行に身分証を提示すれば、人民元から外貨への換金が認められます。

一方、外国人個人には総量枠は認められておらず、中国内で取得した経常性人民元は、銀行に証憑書類を提示して、換金申請する必要があります(第 59 条)。

例えば、人民元建て給与の場合、身分証明書と個人所得税納税証明などを銀行に提示しますが、申告所得内であれば、通常は問題なく換金できます。

2)両替後の再換金

外国人個人が、外貨から人民元に換金した未使用残額の、外貨への再換金は、元となる換金証明(24 ヶ月有効)に基づき認められます。制限金額は、一日の累計額は US$ 500 以内、出国手続き後の換金は、US$ 1,000 以内となります(第 60 条)。

2.対外送金

**①  中国人公民の****経常性外貨対外送金制限(第 64 条)**

1)外貨口座内資金の対外送金

外貨口座内の対外送金は、当日の送金額が US$5 万以内であれば、銀行に身分証明書を提示する事で認められます。それを超過する場合は、加えて、用途説明資料の提示が

必要です。

これは、外貨口座内外貨は来歴が明確であるため、下記2)の現金の場合に比較して、大きめの送金枠が認められているものです。

2)外貨現金の対外送金

外貨現金を銀行に持ち込み、対外送金する場合は、当日の送金額が US$ 1 万以内であれば、身分証の提示で、送金が認められます。

それを超過する場合は、加えて、税関印のある「海关申报单」、若しくは、本人の、元の銀行預金の外貨引出証明と、用途説明資料の提示が必要です。

②  外国人個人の経常性外貨対外送金(第 65 条)

1)外貨口座内資金の対外送金

外貨口座内の外貨は、銀行に、身分証明書を提示することで、対外送金が認められます。

外国人には、上記 ① の通り、人民元から外貨への換金に付いては総量枠制限が無く、個別に銀行手続をした上で外貨換金を行います。このため、外貨口座内の資金の対外送金は、中国公民よりも規制が緩くなっています(送金額の制限がない)。

尚、企業に対してはクロスボーダー人民元決済が解禁されていますが、個人の場合は、まだ認められていません。よって、対外送金が必要な場合は、必ず外貨に換金した上で、送金する必要があります。

2)外貨現金の送金

外貨現金を銀行に持ち込み対外送金する場合、当日の送金額が US$ 1 万以内であれば、身分証の提示で対応が認められます。これは、中国公民と同様です。

それを超過する場合は、加えて、税関印のある「海关申报单」、若しくは、本人の、元の銀行預金の外貨引出証明と、用途説明資料の提示が必要です。

3.外貨現金管理

①  外貨現金引出(第 86 条)

個人の外貨現金の引出は、当日累計 US$ 1 万以内であれば、銀行に、身分証明書を提示すれば、認められます。

特別の必要性(外貨事情の悪い国への出国など)により、US$ 1 万以上の現金引出が必要な場合は、身分証明書以外に、用途説明を所管の外貨管理局で備案した上で、「提起外币现钞备案表」を取得し、銀行に提示する必要があります。尚、備案書の有効期限は 30 日以内となります。

②  外貨現金の人民元への換金(第 88 条)

年間換金枠(US$ 5 万)に基づく、外貨現金の人民元への換金は、当日累計 US$ 1 万相当以内であれば、身分証明書のみで認められます。それを超過する場合は、加えて、税関印のある「海关申报单」、若しくは、本人の、元の銀行預金の外貨引出証明と、用途説明資料の提示が必要です。

③  外貨携帯制限(第 89 条)

個人の外貨携帯入境制限は、US$5,000 以内であり、それを超過する場合は、税関申告が必要です。但し、同日内の複数回入国、短期間に多数入国する場合は、二回目以降は、金額に拘わらず、税関申告が必要です。

個人の出境時の外貨携帯は、直近の入境時の持ち込み申告記録がない場合、US$ 5,000 超~ US$ 1 万以内の場合は、銀行に「携带外汇出境许可证」の発行を申請する必要があります。US$ 1 万を超過する場合、取引銀行所在地の外貨管理局に、「携带外汇出境许可证」の発行を申請する必要があります。