【水野コンサルタンシー中国ビジネス情報】ダイジェスト版Vol.207

2023-10-11

【中国ビジネス・トレンド】

以下のビジネス動向に付いて解説します。

1. 個人所得税特別付加控除に関する通知(国家税務総局公告 2023 年第 14 号)

2019 年 1 月 1 日の個人所得税法改定で、以下の特別付加控除が開始されましたが、この内、「子女教育と老人扶養」の控除額が、2023 年 1 月 1 日に遡及して増額されました。

(1) 個人所得税法施行時の特別付加控除

現在の個人所得税導入時(今回の増額前)の特別付加控除は、以下の通りです。
●  子女教育
子女一人当たり毎月 1,000 元
●  継続教育
毎月 400 元(同一学歴の継続教育控除期限は、48 ヶ月を超えない)
尚、証書取得年度は、期間に拘わらず 3,600 元
●  大病医療
個人負担が 15,000 元を超過する医療支出に付き、確定申告時に、80,000 元を上限として控除可能
●  住宅ローン金利
1 軒目の住宅ローン金利に限り、毎月 1,000 元。期間は最大 240 ヶ月
●  住宅家賃
直轄市、省級都市、計画単列都市等は、毎月 1,500 元
その他の都市の場合、人口 100 万人以上の都市は毎月 1,100 元。100 万人以下の都市は毎月 800 元
●  老人扶養
60 才以上の父母、及びその他の法定扶養対象等に対して、納税者が一人っ子の場合、毎月 2,000 元。一人っ子でない場合は、上記金額を分担して控除

(2) 今回の増額

今回の増額で、子女教育費と老人扶養控除は、以下の通り増額されました。
1)子女教育費
子女一人当たり、毎月 1,000 元から 2,000 元に引き上げられました。  
尚、この控除額は年齢による違いはありませんが、3 歳以上から小学入学前の場合は「学前教育」、それ以降は「学歴教育」を選択する形となります(上海市長寧区税務局に確認済)。

2)老人扶養
扶養対象の老人一人当たり、毎月 2,000 元から 3,000 元に引き上げられました。
一人っ子でない場合は、毎月 3,000 元を分担して控除することになりますが、一人当たり毎月分担金額は 1,500 元以内となります。

原文は こちら

2.先進製造業企業に対する仕入れ増値税加算控除に関する公告(財政部・税務総局公告 2023 年第 43 号)

2023 年 1 月 1 日~ 2027 年 12 月 31 日の期間、一般納税人である先進製造業企業は、増値税の 5%割増仕入控除の適用が認められます。
先進製造企業の定義は、「科技部・財政部・国家税務総局による高新技術企業認定管理弁法の通知(国科発火[2016]32 号)」に基づきます。

原文は こちら

3.集積回路と工作機械企業の研究開発費用加算控除に関する公告(財政部・税務総局・国家発展改革委・工業と信息化部公告 2023 年第 44 号)

国家が奨励する集積回路企業・工作機械企業が支出する研究開発費に関しては、2023 年 1 月 1 日~ 2027 年 12 月 31 日の期間、以下の税務優遇が受けられます。
●  当期費用として計上する場合は、120%の損金算入が可能。
●  無形資産計上する場合は、原価の 220%に基づき、減価償却し、損金算入可能。

尚、該当企業の条件は、財政部・税務総局・発展改革委員会・工業信息化部公告 2020 年第 45 号(集積回路製造・設計企業)、工業信息化部・国家発展改革委員会・財政部・税務総局公告 2021 年第 9 号(集積回路装置、材料、包装、測定企業)などにより判断されます。

原文は こちら

4.越境 E コマース輸出商品の返品に関する税収政策の公告(財政部・税関総署・税務総局公告 2023 年第 34 号)

2023 年 1 月 1 日~ 2025 年 12 月 31 日の期間、越境 E コマースで中国から輸出した商品で、税関監督番号が、1210、9610、9710、9810 に該当し、売れ残り・客からの返品により、輸出日から 6 か月以内に、輸出時の状態のまま、再輸入する商品に対して(食品は含まず)、再輸入時の関税・増値税・消費税課税が免除されます(輸出時に、輸出関税の適用を受けている場合は、これも還付)。
これは、「越境 E コマース輸出商品の返品に関する税収政策の公告(財政部・税関総署・税務総局公告 2023 年第 4 号)」で、1 年間限定で認められる制度でしたが、適用期間が、2025 年末まで延長されたものです。適用対象となる税関管理番号の内容は、以下の通りです。

●   1210
中国内の個人・E コマース企業が、税関公認の越境 E コマースサイトで成約し、保税区域経由で小売商品を輸出する方式。
●   9610
中国内の個人・E コマース企業が、税関公認の越境 E コマースサイトで成約し、税関オンライン経由「商品・物流方式・決済条件」情報を記載したリストを提出することで、簡易輸出通関を行う方法です。
●   9710
中国内の企業が越境 E コマースのプラットフォームで成約し、国際物流方式で直接貨物を海外企業に対して輸出する方式。
●   9810
中国内の企業が貨物を海外倉庫に輸出し、越境 E コマースプラットフォームで成約後に、海外倉庫から海外の購入者に商品を送付する方式。

原文は こちら

5.設備、器具控除に関する企業所得税政策(財政部・税務総局公告 2023 年第 37 号)

2024 年 1 月 1 日~ 2027 年 12 月 31 日の期間に新規購入する設備、器具(不動産建物、マンション物件等は含まない)に関して、以下の優遇が認められます。
●  単価 500 万元以下の場合、一括して当期の費用として計上(損金算入)可能。
●  単価 500 万元を超過する場合、企業所得税実施条例、財税[2014]75 号、財税[2015]106 号に基づき対応する。

尚、「固定資産の加速度償却を改善する事に関する企業所得税政策の通知(財税[2014]75 号)」の内容は、2014 年 1 月 1 日以降に新規購入した設備機械について、以下の一括償却・加速度償却を認めるものです。
●  特定の製造業(生物薬品、専用設備、輸送機、コンピューター、情報通信、ソフトウェア・電子機器、機器計器)、情報産業、ソフトウェア産業の場合、加速度償却、減価償却年限の短縮が認められる。また、当該業種において、小規模薄利企業が研究開発・生産経営のために購入する機器・設備であり、単価が 100 万元以下の場合は、初年度一括償却(損金算入)が認められる(100 万元超の場合は、加速度償却・償却年限短縮)。
加速度償却方法は、200%定率法か級数法とし、減価償却年限は企業所得税法の期限の 60%以上の期間とする(以下同じ)。
●  全ての業種の企業において、購入する設備が研究開発専用であり、単価 100 万元以下の場合は一括償却が可能。100 万元超の場合は、減価償却年限の短縮、若しくは、加速度償却が可能。
●  全ての業種の企業において、単価 5,000 元以下の場合は、初年度一括償却(損金算入)が可能。

また、「固定資産の加速度償却に関する企業所得税政策を一層改善する政策の通知(財税[2015]106 号)」は、一部の小型企業に対して、購入する 100 万元以下の設備に付いては、一括償却認め、それを超過する場合は、加速度償却を認めるものです。

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6.研発機構の購入設備増値税政策に関する公告(財政部・商務部・税務総局公告 2023 年第 41 号)

内資研発機構と外資研発中心が、中国産設備を購入する場合、増値税の全額還付を認める公告です。
対象期間は、該当企業(内資研発機構・外資研発中心)が、税金還付資格を取得した翌月から、2027 年 12 月 31 日までとなります。

原文は こちら

7.汚染防治に従事する第三方企業に対する企業所得税の公告(財政部・税務総局・国家発展改革委・生態環境部公告 2023 年第 44 号)

汚染防止に従事する企業・組織・団体に対しては、2024 年 1 月 1 日~ 2027 年 12 月 31 日の期間、15%の企業所得税税率の適用が認められます。

原文は こちら

8.対米国差別的関税不徴収に関する延期公告(税委会公告 2023 年第 7 号)

国務院より公布された「対米国関税課税に関する 10 回目の不適用延長に関する商品リスト公告(税委会公告 2023 年第 1 号)」です。
リスト掲載商品の報復関税非適用期限が、2023 年 9 月 15 日でしたが、これが再度、2024 年 4 月 30 日まで延長されました。

原文は こちら