外資企業清算時の税務登記抹消 執筆日:2019年11月23日

2020-05-31

外資企業清算時の税務登記抹消

中国における外資企業の清算は、従来、1.5 年以上の時間を要していましたが、その中でも、最も時間を要するのが税務登記抹消でした。近年、税務登記抹消手続が合理化されており、その状況が変わってきています。

1.税務登記抹消の合理化

税務登記抹消に時間を要していたのは、担当者の審査時間が長い(更には、確定申告などの繁忙期には、対応が後回しにされる事も多かった)ことや、税務機関が国税と地税に分かれており、双方の審査・許可を受ける必要があった(同時審査は不可で、一つ一つ対応する必要があった)事によります。

これが、税務組織の統合(国税・地税の統合)により、審査時間が迅速化されただけでなく、「企業税務抹消手続の一層の合理化に関する通知(税総発[2018]149 号)」により、作業ステップが大きく合理化されました。

現在では、税務登記抹消手続は、清算企業の状況によって、以下の通りとなります。

① 即時抹消が認められる企業

企業の通常清算に際して、税務登記抹消を申請した納税者が、以下の双方を満たす場合、税務機関は、即時抹消を認めます。

● 税務検査の状態にない。税金の未納(滞納金)および罰金がない。増値税専用発票、お

よび税統制専用設備をすでに返却している。

● 以下の、何れかに合致する。

・ 納税信用等級が A 級、若しくは、B 級。

・ 持分を支配する親会社の納税信用等級が A 級である M 級の納税者。

・ 省級人民政府が誘致した人材、若しくは、省級以上の業界協会などの機関の認定を受けた、業界のリーダー的人材などが創業した企業。

・ 納税信用等級評価に組み入れていない定期・定額の個人工商業者。

・ 増値税の納税最低額に達していない納税者。

② 通常手続が適用される企業

上記 ① 以外の企業

2.実務対応状況

① 即時抹消が認められる企業

上記1-① の条件に合致する場合、税務局システムで税務登記即時抹消手続(1 営業日)が可能であり、問題がなければ、税務局システムより(窓口での手続不要で)、企業清算に必要となる納税完了証明が取得できます。

但し、実務上は、税務登記抹消申請以前に、以下の手続を行う必要が有ります。

1)税務調査を受けている場合は、事前に解決する。

2)未払費用・固定資産・在庫などを全て整理した上で、最新の賃借対照表・損益表を作成

し、そのデータを、システム経由で税務機関に提出する。

3)税金の滞納、過納付の有無を確認する。滞納が有る場合は迅速に納付する。過納付の場合は、還付を申請するか、放棄するかを企業が決定する。

4)加工貿易企業の場合は、税関での手冊抹消後に、税務システム上の手冊情報を抹消する。

5)増値税輸出還付資格を抹消する。

6)未使用の発票を返却し、発票発行システムを抹消する。

税総発[2018]149 号施行後、当社でも中国各地域で税務登記抹消作業を実施していますが、条件に合致する企業は、実際に、即時抹消が受けられています。

② 通常手続が適用される企業

即時抹消の条件に合致しない企業の場合、一般税務抹消手続(通常の税務登記抹消手続)を採用します。

この場合、関連抹消申請書類を当局に提出し、問題がなければ、20 ~ 40 営業日後に、納税完了証明が取得できます。

勿論、申請時に、税金の滞納、その他の特殊状況がある場合、これらを解決してからの手続開始となるのは、上記 ① の場合と同様です。

この場合(正規の税務登記抹消手続)の手続も、かつてに比べて手続は合理化されており、上海市税務局でのヒアリングでは、以前は、3 ~ 6 ヶ月かかっていた抹消作業が、20 ~ 40 営業日と短縮されているとの回答でした。